> うまなり[Home] / 企業の社会的責任(2004)
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「CSRとは(…)事業活動と離れたところで何か特別な社会貢献活動が求められているわけででもない。CSRの問いかけとは、日常の経営活動のあり方そのものを問うているのである」(p.1)
「CSRは基本的に経済活動のプロセスにおいて問われる課題であり、経済活動のあり方そのものなのである」(p5)
(谷本によるCSRの定義)「企業活動のプロセスに社会的公正性や環境への配慮などを組み込み、ステイクホルダー(株主、従業員、顧客、環境、コミュニティなど)に対しアカウンタビリティを果たしていくこと。その結果、経済的・社会的・環境的パフォーマンスの向上を目指すこと」(p5)
「企業の社会的影響力、ステイクホルダーの期待と圧力、企業の社会的関与、CSRへの支持と評価(有能な人材をひきつける、地域社会から受けとめられる、企業のブランドや評判が向上し顧客・投資家をひきつける)」(p.6-7)
「NGOによるGC(Global Compact)への批判もみられる。つまりCGは遵守を促す仕組みも、客観的で強制的なモニタリング・システムもないが故に、実行性をともなわない「ブルーウォッシュ」に陥る可能性も高い、と指摘する。」(p12)
「Vの段階:さらに社会的・環境的評価のみならず、コーポレート・ガバナンスや企業の透明性といった非財務的評価を組み込み、トータルな企業価値を測ろうとするSRI。このスタイルが広がり定着していけば、それはもうSRIとは呼ばず、メインストリーム化していくといえよう。」(p20)
「日本では戦後、コアのステイクホルダーを取り込むように閉じたネットワーク・システムとして企業社会が形成されてきたため、ステイクホルダーが企業に対峙し企業のあり方をチェックするというような関係性は非常に弱かった。例えば「株主」は法人化し、基本的に金融機関を中心に株主相互持合関係がつくられてきた。少数の中心的な法人株主間のネットワークの中で、相互所有−相互信頼−相互支配という関係が維持されてきたため、株主総会は形骸化し、実質的には経営者支配の状況がつくられてきた」(p22)(…)「「コミュニティ」については、急速な産業化、都市化(さらに東京一極集中)によって旧来の地域共同体は解体し、個人や企業と地域社会との結びつきは希薄化していった。地域の問題を自ら課題として取り組む市民の意識は弱かった。一方で企業と地域行政府との関係は、〈誘致⇔雇用機会の提供、納税〉を中心に相互依存的であり、また企業にとって地域社会は商圏、開発の対象であり、企業市民的発想はほとんどなかった。(p.23)
「日本ではCSRにかかわる労働組合の関心が低いこと、ないしは労働組合の関与の程度が低いことが分かる。国際的には労働に関するCSRの基準づくりが整備されているにもかかわらず、なぜこのように日本での取り組みが遅れているのか。まず考えられるのは、日本企業の内向き体質である。日本企業もグローバル競争の中で多国籍化も進んでるが、日本の本社、とくにCSR策定にかかわる部門では、労働問題に関する関心が低く、労働問題に関して自分の企業はうまくやっているし、そのことについて行動指針を示す必要もないと考えていることである。労働組合も同様に、自社の国内での労働組合員の雇用と労働条件を守ることには熱心でも、グローバルな視点で問題を捉えることになっていないことが考えられる。また、日本企業が行動指針を策定する直接の契機となったのは、相次ぐ企業不祥事であり、対株主、対消費者に対して説明できる行動指針の策定を目指したので、国内、国外における労働問題は、株主、消費者の関心が低いこともあってプライオリティが低いものとなっているように思える」(p.94)
「この谷間に下がっていく平均年齢が29歳。女性がもっとも心ゆれる年齢である。平均勤続年数は9.0年(2003年)、この分岐点で女性は揺れ動く。(…)分岐点で女性たちが悩むのは、出産・子育てと仕事の両立の困難性と、企業の中での女性の評価や登用が低く、企業に留まるインセンティヴが低くなることである」(p.100)
「パートタイム労働の問題の1つは「非課税限度額」「配偶者控除」や「第3号被保険者制度」等の社会制度にある。「配偶者控除」の対象となるというのは、被扶養者の地位を維持することであり、年収を「103万円」や「130万円」までに自主調整するのもここに原因がある。企業側も配偶者手当てや住宅手当などの支給基準をここにしている。このように夫は稼ぎ手、妻は家事とパートという役割分業を前提にした税や年金の制度が、働く女性の不満や不公平感を助長している」(p.101)
「たんに女性だからという理由だけで女性を「優遇」するためのものではなく、これまでの慣行や固定的な性別の役割分担意識などが原因で、女性は男性よりも能力を発揮しにくい環境に置かれている場合に、こうした状況を「是正」するための取り組みである。」(…)「まず第1に労働意欲、生産性が向上する。性にとらわれない公正な評価により活力を創出する。男性優位の企業風土がある場合には、その風土を見直し、能力や成果に基づく公正な評価を徹底し、女性社員の勤労意欲と能力発揮を促すものである。また女性の活躍が周囲の男性社員にもよい刺激を与え、結果的に生産性の向上や競争力の強化をもたらす。第2に多様な人材による新しい価値の創造がある。(…)第3に、女性に選ばれる企業になる。(…)第4に社会的信頼を得る」(p.106)
「企業が人権に取り組む理由は一般的に、@起業活動は人権の諸原則が守られていないところでは成り立たない、A差別は自らの経営合理性を排除し市場を狭める行為である、B人権で問題を起こしたら企業のイメージダウンにつながる、というように説明されることが多いようだが、一方において、@については、例えば先住民族の権利が守られている土地のほうが地下資源開発は実施し難くなるし、Aについては、企業への帰属意識を重視する雇用慣行のもとでは、「異分子」を排除する文化がかえって企業内の結束を固める方向に機能しているという現実が散見されるし、Bについては、人権で問題を起こしても日本国内においてはイメージダウンの要素とならない、といった社会状況が存在することを認識しなければならない」(p.123)
「日本のCSR議論における人権の位置付けは非常に限定的なものにとどまっている。一般的にそれは、雇用における差別の撤廃やセクシュアル・ハラスメントの防止などの課題とどまり、CSRというよりは従業員個々人の意識の問題や雇用における方針として位置付けられることが多い。一方、人権分野におけるサプライチェーン管理は圧倒的に立ち遅れており、配慮がなされているとしても児童労働や強制労働の禁止などの限定的な課題に限られている。CSRと人権の問題を考察するにあたっては、無意識的に課題を矮小化してしまうことに対して、十分な注意が払われるべきであろう」(p.124)
」
「消費者とCSRとのかかわりは、企業行動を引き起こす「消費者問題」として補足され、企業=加害者、消費者=被害者という構造をもつものである」(p.142)
「当面、グローバルに求められる企業のCSRマネジメント構築と情報開示が新たな社会形成にむけて先行していくことになるであろうが、これからの市民社会は、消費社会の分野では、消費者の権利が保障され、その自己責任にもとづく社会的行動が広がり、消費者と企業のCSRが基盤となる社会である」(p.156)
「既存の配慮では、解決できない難題が出てきたならば、これこそ「大きなチャンス」である。大げさな研究調査は必要なものばかりではない。ちょっとしたことで、解決することもいくらでもある、と思う。その考え出された応えは、大いに宣伝し、できうれば他のライバル企業にも採用してもらう度量をもち合わせると、その成果が末永く発見会社を賞賛の目で見ることにもなり得るのである」(p.172)」
「アクセシブルデザインへの取り組みは一過性の「流行」で終えるものではなく、また「特別なことではない」ことが原則
である。独自性を、いかに他に波及させ、世の中のディファクトにするかが、醍醐味であり、勝負でもある」(p.173)
「環境経営に先進的に取り組む企業の実例が増えたことで、経営に環境を取りこむのことのメリットが明らかになってきたであろう。このことは、言葉を代えると環境が企業や産業界にとってステイクホルダーとして認識されるようになってきたことにもつながる」(p.177)
「経済活動の規模が地球環境要領に匹敵するほど大きくなった結果、地球環境問題という大きなフィードバックを引き起こすようになってきた。ただし、地球環境自体はヒトではないので、社会の中で発言はできない。自然の変異や人間の健康への被害という形で間接的にメッセージを発するにすぎない。そこで、環境保護団体や地域社会、NGO、あるいは行政などがそのメッセージを解釈して地球の価値を認識し、地球環境の代弁者(異なる立場のステイクホルダー)として行動することになる。こうした活動によって、環境保全を目的とした法や制度や社会の認識や意識が醸造されているのである」(p.178)
「エコロジカルフットプリントとは、1人あたりどれだけの地球上の資源を消費しているかを、地球の平均的な再生産能力(グローバルヘクタールという面積の単位で表示)で計算したものである。これによると、地球の1人当たり平均生産能力の1.9グローバルヘクタールに対して、1人当たりの消費量は2.28グローバルヘクタールと、すでに消費が供給を上回り、地球のストックを取り崩していることを示している」(p.178)
「現在の経済の仕組みは、原材料を加工して製品・サービス(goods)をつくり、それを消費して最後は廃棄物を発生させる。その各段階で、廃棄物や有害科学物質やCO2などのbadsが発生する。お金の流れは、goodsの流れと逆方向にある。原材料を購入すれば、購入代金が払われる。ものを運べば、運賃が支払われる。しかし、badsが生じた場合は、お金は同方向に流れるか、支払われない。例えば工場で産業廃棄物が生じれば、処理費用を払って処分してもらうが、それが100%、badsとしての価値を反映させりているとは限らない。ごく一部の価値しか反映されていない」(p.180-1)」
「拡大製造者責任とは、一定の製造から使用までに限られていた製造者の責任を、使用後つまりは廃棄や再利用の段階まで拡大して捉えるという考え方で、廃棄物を回収して再利用あるいは処分する義務は製造者にあるとする。これは薄利多売というビジネスモデルからの転換を促進することになる。薄利多売では、負荷価値商品を大量販売して利益を確保するという考え方であるが、拡大製造者責任の考えでは、薄利多売で販売した商品の廃棄後までも製造者の責任となるので、薄利では、多売し、広く拡散した自社製品を回収し、処理するコストが賄えない。高付加価値商品を適切な数量販売するビジネスモデルのほうが、収益を確保しやすくなる」(p.183-4)
「マテリアルフローコスト会計という、製造・流通プロセスの各段階で使用廃棄したマテリアルの流れをすべて把握する会計手法では、製造工程をすべて洗い出すことになり、製造工程の抜本的な見直し手段として活用することが可能となるので、業務効率化の面からも注目されている」(p.195)
「日本企業のコミュニティ活動は、同社並みのことは行う(横並びの発想)、あるいは公害やスキャンダルからのネガティブイメージの払拭(免罪符としての発想)としてかかわる、ということが多かった。企業のコミュニティ活動が活発化していく1つのきっかけとして、80年代後半にアメリカへ本格的に進出した日本企業が、現地コミュニティとの互恵的な関係づくりに迫られたことが挙げられる。そこでは批判も受けながら、コミュニティにおける企業市民の役割と期待を学んだ」(p.205)
「限られた企業の資源を求めるNPO間の資源獲得競争は激化している。また企業側も厳しい経営環境の中で、フィランソロピー・プログラムの正当性を株主にどのように説明するかが重要な課題となっていた。株主利益とフィランソロピー活動を両立させる方策が施行錯誤され、「戦略的フィランソロピー」という概念や、「コーズ・リレイティッド・マーケティング(cause-related-marketing)」といった考え方が支持されるようになっている」(p.207-8)
「企業がNPO/NGOと協力してフィランソロピー活動に取り組むにあたっては、そのもとめるミッションを明確化‐共通化した上で、コラボレーション関係を対等に作り上げていく努力が求められる。そうでなければ、グリーン・ウォッシュ(見せかけだけの環境指向)、ホワイト・ウォッシュ(見せかけだけの社会志向)、あるいは偽善的マーケティングとして非難を受けることになる」(p.214)
「(…)CSR的な企業活動を通じて獲得される企業の評判は、コーポレートブランドの形成を通じ最終的に消費者を引き付け業績への貢献につながるものと考えられる。また柔軟性を高め女性の登用を積極的に進めるなど人的資本を最大限に活用している企業のパフォーマンスが、相対的に高くなっても何の不思議もない」(p.225)
「リスクマネジメントの観点からは、例えば企業が厳格なコンプライアンス規定を設定し、かつ徹底することで不祥事の発生頻度を低下させることができると考えられるが、その際費やされるコストは、不測の事態が発生したさいの莫大な処理負担とは比較にはならない」(p.226)
「CSRは企業が持続的な成長を果たしつつ、最終的にはグローバル社会への貢献といった独自のミッションを実現するための手段であって目的ではない。STBユニバースは、ある意味では手段の総合点であるので、起業目的に向けて経営者がCSRをいかに有効に活用しているかを調査・分析し、銘柄判断に生かすことで、さらに魅力的なポートフォリオを構築するという主旨である」(p.229)
「第1に、問題発見のコストを節約することが可能になる。企業が理念としてコミュニティへの貢献や青少年育成の重要性を唱えるだけでなく具体的な活動にまで導くには、どの国にいかなる課題があり、それらの課題の中でいずれの対応を優先させていくかを明らかにする必要がある。(…)第2のメリットは、各地域におけるパートナー選びのコストとリスクの削減である。課題の所在が明らかになれば、次に活動を実際に行う業者やNGOを選定しなくてはならない。(…)第3のメリットは、活動に対する評判と信頼性の確保である。たとえ企業がまったく善意でコミュニティに近づいても、初めからつねに好意をもって受け入れられるとは限らない。しかし国際的に成果を収めているNGOの信頼性のもとで、協力関係を得やすくなるだろう」(p.249)
「通常、企業が社会的責任にかかわる取り組みを考えるにあたっては、自社を中心としたステイクホルダーが想定される。(…)ここでは、スカニアは参加者の中心に位置するというよりも、むしろステイクホルダーの一員という立場である。いわば、小規模事業者が多く、自らのステイクホルダー・リレーションズを確立することが難しいトラック業界になり代わって、スカニアがステイクホルダー同士の横の連帯を組織するという形になっている」(p.252)
CSRを事業の中に組み込むことによってリスクを軽減させ、社会的信頼を得て、企業価値の増大につながっていくという考え方は、「ビジネス・ケース」(Business Case)と呼ばれ産業界に定着してきている。逆にこのような事業性との関係を説明できなければ、社内での合意形成−全社的な取り組みも難しくなるため、CSRを戦略的に捉えていくことが大切なのであ」(p.258)
「企業活動の社会的・環境的側面は非財務的要素であるが、今後トータルな企業価値を高めていくためにはCSRへの対応が重要になってくる。社会的に責任ある企業への支持、信頼というものは、企業ブランドを考えていくうえで重要な要素であり、まさに無形資産として把握されるものである」(p.260)
「事務的、横並び的に対応するケースを「リスク対応型」CSRと呼ぼう。リスク対応型は、社会からの批判や圧力をできる限り小さくすることを目標におく。したがって、コンプライアンス(法令遵守)対応の領域が中心となる。日々生じる市場・社会からの圧力にいかに対応するかは、経営の中枢にいるというよりも現場の業務レベルにおける対応・意思決定が中心となる」(p.260)」
「そもそもCSRとはステイクホルダーへのアカウンタビリティを果たす事であり、このチェックの段階でステイクホルダーに積極的に関与ししていくことが求められる。さらに社会からの信頼を得るという視点から、報告に際して第三者の専門機関からの審査や保証、レビューを受けることをマネジメント・システムのステップに入れることもある」(p.266)」
「モニタリング手法の一例として、通常の経営管理の場で広がっているバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard)をCSRに応用する試みがヨーロッパ企業の間で始まっている。BSCはもともとアメリカで非財務的要素の業績評価システムとして開発されたもので、業績評価指標を具体的に設定しこれを軸にして、戦略を実質的に社内展開していくというものである」
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◆南村博二 (2004) 『わたしたちの企業倫理学――CSR時代の企業倫理の再構築
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商法は会社が寄付をなすこと自体について何も定めていないので、八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決が法的根拠となって、会社は慈善的寄付、メセナなどの文化活動に対する援助その他の寄付を行うことができると考えられている。しかし、わが国は成文法主義を採る以上、このことについて立法による根拠づけをなすべきである。そのうえ、政策として公益増進のための寄付金控除の枠(アメリカと同じく課税所得の10パーセント程度)を、新たに法律に明記すべきである。前述のようにCSR関連の法改正はあったものの、根本的な見直しが図られるべきである。前述のようにCSR関連の法改正はあったものの、根本的な見直しが図られるべきである。これには産業界の要望もある。同時に、一般寄付金制度の改善に着手すべきである。使途が特定されない本制度は政治献金とは切り離されるべきである。また、寄付金控除規定の定める限度額計算は、事業年度の所得金額および資本の額を課税ベースとしているために高額の法人税負担者にとって有利である。特に、当制度の寄付金控除に係わる限度額計算は複雑すぎるとの問題もあり、全廃を求める意見もある。それを含めた検討の必要がある。第二に、寄付金の範囲に関する解釈論として、本当に公益的な寄付については長期的に会社のためになるという価値判断を背景において、できるだけ広く費用控除を認めるべきである。わが国の場合、そもそも寄付金の捉え方があまりに一面的であったという反省をこの際する必要がある。このことは、実際に寄付を行う当事者である会社がなす費用性の判断を国家が尊重することにつながるであろう。(p.47)
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◆森田章 (2004) 「商法学の観点からみたCSR」,『法律時報』, 76(12), 40-45. 商法は、取締役に対して会社への忠実義務・善管注意義務を規定するだけであり(254条の3、254条3項)、取締役が株主に対してこれらの義務を直接的に負っているのかどうかはすこぶる疑問である。取締役が会社に対して忠実義務・善管注意義務を負うことと、株主に対してまでそのような義務を負うと考えることとのあいだには大きな差異があるからである。つまり、会社の利益の最大化を図るという場合、当面の株主の配当を低くして新規の事業展開のための支出をするということもあり得るが、株主の利益の最大化ならば不確かな新規事業の展開よりも配当に回したほうがよいという議論があり得るからである。(p.43) >top
◆佐久間京子・青木広明 (2004) 「エティベル・グループにおける企業の労働・人権面の調査・評価方法」, 労働科学研究所出版部, 『労働の科学』, 59(11), 653-
SRIにおける企業の労働・人権面の調査については、一般に以下のような課題がある。まず、企業の環境面での評価に比べ定量化による評価や企業間比較が非常に困難であるという点である。たとえば、企業が従業員研修に費やした費用や時間というものは定量的に把握できても、その有効性を定量的に把握することは非常に困難である。もちろん、労働環境衛生のように、定量的なデータを用いて評価や比較を行うことが比較的容易な分野もあるが、具体的にどの指標を用いるかという面では同じ業界の中でもまだまだ議論の余地があるし、関係会社を含めたグループ全体のデータの入手可能性という面でも課題がある。また、企業の人的資源の管理や育成は本来、中長期的な視点からなされるべきものであるが、SRIの裾野の広がりとともに、株価や企業業績に直接結びつくバリュードライバーやマテリアリティに注目が集まる中では、このような問題の重要性は過小評価される懸念もある。(p.654
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◆磯村篤範 (2004) 「リスクコミュニケーションの意義と背景――情報公開と責任の再配分」, 環境技術学会,『環境技術』, 33(4), 255-259. リスクコミュニケーションにいう「リスク(risk)」とは、一般に「デンジャー(danger)」すなわち現実に被害を生ぜしめることが明白なものという意味での「危険」ではなく、潜在的な危険、つまり危険なものである可能性はあるが、現時点ではまだ危害であることについて不明確な物=「危険因子」のことを意味している。(p.255) 」
>top ◆UP:050222/REV:060322,060412,060520,060528,060913,060914,060930,061003,061207,070202,0204,0217,0223,0515,0530,1030,080304,1229,110203,0204,0206 |