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> うまなり[Home] / 企業の社会的責任（-1949）
-1949
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◆Gladden, A., (1897). Social Facts and Forces -the Factory, the Labor Union, the Company, the Railway, the City, the Church ◆Rauschenbusch, W., (1907). Christianity and Social Crisis.
◆Clark, J. M., (1916). "The Changing Basisi of Economic Responsibility," Journal of Political Economiy, March. >top
◆Brookings, R. S. (1925). Industrial ownership, Its Economic and Social Significance, New York ◆Donhan, W. B., (1927, July). "The Social Significance of Business," Harvard Business Review 5(4). pp.406-7. ◆Filene, Edward A. (1922, May). A Simple Code of Business Ethics. Annal of the American Academy of Political and Social Science. 101, 223-228. ◆Sheldon, Oliver. (1924). The Philosophy of Management. Prentice-Hall.
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◆Barnard, Chester. I., (1938). The Functions of the Executives. Cambridge, Mass: Harvard University Press.(= 1956 山本安次郎・田杉競・飯野春樹 訳 『新訳・経営者の役割』, ダイヤモンド社) ◆Berle, Adolf. A. Jr., (1931). Corporate Power as Powers in Trust. Harvard Law Review.44, 1049-74. ◆Berle, Adolf. A. Jr., &, Means, Gardner. C., (1932,1965). The Modern Corporation and Private Property, New York, The MaCmillan Co. (= 北島忠男 訳 『近代株式会社と私有財産』 文雅堂銀行研究社) ◆Berle, A. A. Jr., (1932). Whom Corporate Manager are Trustees? A Note, Harvard Law Review. 45, 1365-72. ◆Clark, J. M. (1939). Social Control of Business. New York: McGraw-Hill ◆Dodd, Merrick E. Jr., (1932). For whom are corporate managers trustees? Harvard Law Review.45, 1145-1163. ◆Dodd. Merick E., (1935)."Is Effective Enforcement of The Fiduciary Duties of Corporate Managers Practicable?," 2 Chi. L. Rev. 194.
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◆Burnham., (1941). The Maganerial Revolution -What is Happenig in the World. The Johon Day Company, Inc., reprinted, 1962. (= 1965 武山泰雄 訳 『経営者革命』 東洋経済新報社) ◆Cuber, John F., & Harper, Robert A. (1948). Problems of American Society: Values in Conflict. Ney York: Holt, Rine and Winston, Inc. ◆David, D. K., (1949). "Business Responsibility in an Uncertain World," Harvard Business Review. Mar.→ 山城 [1949:9]に紹介。 ◆Dempsey. Barnard. W., (1949). "The Roots of Business Responsibility," Harvard Business Review, ⅹⅹⅶ(4);395,July. 山城 [1949:9]に紹介。 ◆Drucker, P. F., (1949). The New Society - The Anatomy of Industial Order. Harper & Brothers.
◆Hayek, F. A., (1944). The Road to Serfdom, (= 1954 藤谷一郎 訳 『隷従への道』) ◆Kreps, T. J. (1940). Measurement of the Social Performance of Business: In an Investigation of Concentration of Economic Power for the Temporary National Economic Committee. Monograph 7. Washington: Government Printing Office. ◆Leys, Wayne A. R. (1943, Win.). Ethics and Administrative Discretion. Administrative Review. ◆Merill. Harwood. F. (Ed.), (1948). The Responsibilities of Business Leadership. Harvard University Press. (= 1992 今西宏次・正木久司 訳 『ビジネス・リーダーシップの責任』, 晃洋書房) ◆Pound, R., (1943). "A Survey of Social Interest," Harv. L. Rev. 57. 39. ◆山城章 1949 「経営の社会的責任」,『経営評論』, 4(11), 12月号 経営評論社, 9-13.
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◆山城 章 1949 「経営の社会的責任」,『経営評論』 経営評論社 12月号 p.9-13. その社会的関係の生活には、資本関係、労働関係、政治関係、公的関係等々の多くの利害関係があろう。この関係はインタレスト・グループによる支配的な関係で、このような経営の対外的支配の社会関係と生活を、経営の企業活動と呼ぶ。経営が自主体化した場合の企業観はかかるものならざるを得ない。このような関係の下で、経営自体は生産活動を社会的な責任として営み、そのため自主独立体たるべき権利と能力を許されねばならぬ。経営権とか経営責任というのはこれである。(p.8) 各構成員は、各々経営生産の部分的機能を分担し、これを負担する広義の経営者たるの機能をもつとともに、機能を果たさねばならぬ責任をおはされる。したがって経営は、経営者責任、管理者責任、作業者責任によって仕組まれた責任組織体である。しかし経営責任はかかる構成各員の責任の問題だけではなく、経営自体にも責任があり、これは経営が対外的な諸関係から負う責任である。これはすでに述べた経営体の目的たる生産に外ならぬ。生産こそ経営自体が全体として負う責任であり、この責任を果たすため、経営機能的に組織化せられ、各機能分担者の部分責任が生ずる訳である。この経営全体の責任を形式的外的に体現しているのは経営者である。(p.12) かくて経営上の権利は、かならず機能実行の責任と表裏一体である。ここに経営責任を重視する必要が生れる。責任の問題にもまた、経営責任と経営者責任があろう。経営自主体は、対境関係から、企業責任とでも称すべき、社会的、配分的、生活的なるインタレスト・グループの支配に対する責任をもつが、この根本にある本質的なものは、生産機能を果す責任である。これが経営責任(Business Responsibility)とか経営の貢献(Contribution)と称されるものである。上述のごとく経営責任は経営者自身の内部における生産責任の完徹によって果たされるのだが、この経営自体の生産責任は、経営構成員、即ち広義の経営者の機能分担によって為される。それ故、経営責任は各経営者の責任である。経営者責任は各経営構成員が経営の部分機能を完遂する責任であり、これには教義経営者責任、管理者責任労働者責任がある。この関係から、責任を各員が果たすことが社会的貢献をなすこととなる。貢献とか奉仕などの語が、自己の責任を度外視して高きかなたの高遠なものの追求にあるかのごとく考えることはあやまりである。労働者も経営者もすべて事故の立場に、足を下ろして着実に経営者たるの責任自覚をもち主体的に生産の部分機能を達成する仕掛けが経営体にとって重要である。しかして権利の主張はかかる責任と表裏する機能実行上のものであることもしらねばならぬ。これから遊離した権利を、全然且正当なものと誤解して、経営内の他の人が分体する他人の機能にまで入り込んでこれを妨害したり、逆に自己の責任と権利を忘却したりする傾向なしとしない。特に労働権の主張のうちのこれが多い。(p.13)
>top ◆Sheldon, Oliver. (1924). The Philosophy of Management. Prentice-Hall.
(a)経営技術は主に人間活動を指揮する技術であって、科学は補完的な役割をもつ。これは経営管理と技術とを区別させ、経営管理を専門職へと結びつける。経営者の社会的側面に関する大部門 -(a)社会に対する経営者の関係、(b)経営者が指揮する人びとに対する経営者の関係。(p.65) (b)生産と販売は社会の必要性に関連している。これは産業が社会奉仕のために存在しているという信念に対する経済的基盤を形成する。奉仕がまったく経済的であるはずはない。それは動機において倫理的である。この動機は経営者が新しい役割を引き受けるにつれてしだいに明確化する。それは労使双方が承認することのできるような動機である。この動機もしくは理想は富を福祉に従属させ、財に対して経済的価値ばかりでなく倫理的価値をも与える。この動機は社会に経営方法や企業構造に関する関心を抱かせる。この動機からある種の意味を引き出すことができるが、その実現は産業の能率に依存している。(p.65) (c)奉仕の義務は労使関係に関する新しい考え方をもたらす。労働者はまず第一に人間であり、市民である。工場の生活は社会生活に影響する。したがって経営者は社会的責任をもっている。経営管理の人間的側面の必要性。親切や友情の必要性。経営者はこうしたものを指導しなければならない。(p.65-66) (d)奉仕の教義は生活水準と労働時間に関係する。生活水準は物質的なものだけではなく、全体的な生活水準を向上させるための基盤としての能率にも依存している。疲労の研究が余暇の問題に及ぼす影響。長時間労働と単調に関する社会的不利益。心理学の実り豊かな領域。(p.66) (e)奉仕の教義により、失業、産業のコントロール、反映の成果配分に関して与えられるある種の示唆。権利は義務をともない、特権は奉仕をともなう。企業の基本的倫理を復活させる必要性。協同が競争にとって代わらなければならない。物質的進歩は道徳的進歩をともなわなければならない。これは企業の基本目標の認識から始まる。(p.66) 企業の動機が奉仕である限り、企業は完全に経済だけを思考するわけには行かない。召使の得る利益よりも奉仕される人間や社会の利益のほうを上に置くという奉仕は、いかなるものもまったく経済的あるいは物質的なものになろうはずがない。それは経済的な性格を持つかもしれないが、動機は倫理的であるに違いない。企業によって為される奉仕の現代的な理解を特徴付けるものはまさにこの動機である。企業が社会に対し経済的奉仕を為すことは疑い得ない。(p.70) したがって企業の製品の価値は、経済学者が説明するように、すべて交換価値にあるというわけではない。どうしても経済的価値を評価できないような倫理的価値を製品が持っているというような場合も考えられる。「搾取的」労働条件の下で生産された製品、あるいは社会の福祉に有害な製品の倫理的価値は、実際それらの経済的価値とは反比例するかもしれない。マーシャル教授がオランダの生産力についての分析に中で指摘しているように、「製品の重要性は製品自体の得失にあるが、その製品に関するそれらの得失のすべてが価値の高いものとは限らない。大量標準生産における反復作業が取って代わったということは、千分の一インチに対しては正確であるにしても、人間的な視点からすれば熟練した手工労働より前進したとはいえない。それは物質に対する人間の力を増大させるが、自分自身に対する力を減少させてしまうだろう」(p.72-73) 労働管理および企業全体の能率が向上するにつれて、単位あたりの物質的努力の消費量は当然減少する。経営者の負担が増加するのに対して労働者の負担は減少し、頭脳労働の増加は肉体労働の減少をもたらす。満足が得られず、しかもしばしば心身を消耗しつくすような労苦に多数の人をつかせるような必要性は、企業が能率的になるに従って少なくなるだろう。人間の最高の能力をほとんど発揮させえないような状況では、人間の能力は自分たちの必要とする物質を供給することに向けられるが、こうして解放された人間の潜在的な能力は、啓蒙された社会の観点から見て物質の供給よりもずっと高尚な目的に向けられるだろう。社会が物質的にも精神的にも前進することになれば、精神的能力を企業生活の日常的な労働に従属することはしだいに小さくなるにちがいない。実際、企業が社会に対していかに能率的に物質的に奉仕をしたところで、産業に従事している人びとに、現在の企業生活ではほとんど活用されていないようなより高い能力を発揮させるため最大限の機会を与えるのでなければ、その奉仕は不完全である。企業の動機が真に社会への奉仕であるならば、この動機はわれわれの熟知している産業主義の方法を支配するだけでなく、またかすかにしか意識されていないような産業主義の形態をも作り上げるだろう。社会についていえば産業主義の現在の形態をわれわれは現代社会の必要条件と考えるようになってきた。機械的で満足感のない労苦が必要であるにせよ、とにかく、企業が転換され、労働者が他人の利益に献身し、より高い能力を社会にもっと役立てるような機会を最大限に与えることのできる時代のくることを期待しうるであろう。(p.73) 戦後産業の驚くべき生産性は奉仕の衝動により産業が達成しうるものを示している。世界中の仕事は、科学的に組織することにより各労働者が一日世時間働けば済むということがすでに権威ある筋から推定されている。科学的進歩が現在の水準のほんのわずかな割合にまで手工業の作業を減らさないとはだれが言えようか？研究、発明、組織、経営管理、技術的熟練というものは産業の方法を基本的に変化させ、その結果、企業において人的努力を利用する必要性をわれわれが考え付かないほど最小限に減らす可能性を持っている。
したがって企業における労働者は単に財の生産のための手段ということではなく、社会進歩のための主体でもある。彼は産業上の機能だけでなく、社会的な機能をも有している。彼は労働者であるばかりでなく一個人でもある。これが経営者の社会的義務 －すなわち、労働者を企業の付属物ではなく社会向上のために企業に貸し付けられた個人として考える義務－を形成する基本原理である。従業員をその工場に結びつける絆は、彼の生活の周りに張り巡らされているものだけではない。家族の絆、社会の絆、仕事の絆、国民的絆、宗教の絆などがあり、こうした絆より経済的絆のほうに優先権が与えられると考える理由は何もない。労働者と経営者との経済的関係が、労働者のあらゆる他の関係を断ち切らせることはできない。(p.76) 経営者が指揮する人間的要素の驚くほどの複雑さを経営者が認識するに従って、ある原理が認められ、またある権利と義務が承認されなければならないということも認識するだろう。労働者は一時的な経済的利益のために自己の社会的生得権を売り渡すようなことはしない。彼らの権利は原始的な社会的権利ではなく、文明的で教育のある民主国家の成員の権利である。使用者も労働者もとのみ権利とそれに対応する義務を有している。さらにまたこうした権利が倫理的には正当な機能の遂行に依存している限りにおいて、まさに経営者が実施作業の機能のいずれかを遂行するように求められたなら、経営者が労働者の権利と義務を分担しなければならないのと同様に、労働者も経営管理のいずれかの機能を遂行するよう要求されたなら、労働者は経営者の権利と義務を分担しなけr羽ならない。(p.79) また能率の向上による利益の増加が衡平に分配されないなら、能率はなんら道徳的に正当化されない。したがって「生活賃金」の支給が企業に課せられた第一の債務でなければならない。1921年4月のストライキで賃金を収益に対する第一の債務とし、ある一定期間利潤を割愛し、さらに将来において利潤を賃金の１％に限定するという炭鉱所有者の申し出は、社会に対する経営者の責任の新しい考え方について遅れた認識であるにせよ目覚しいものである。戦時の物価変動がこうした責任をあいまいにしてしまった。このように変動している基盤に基づいて適切な水準がいかなるものかを決定することは不可能である。しかし可能なかぎり最高の賃金を支払うという責任は議論の範囲外である。(p.86) あらゆる権利はそれに対応する義務をになう。経営者も労働者もそれぞれが相手に負い、また両者が社会に負っている義務を果たす前に、権利を主張しがちである。労働者は優れた仕事の基盤のうえにのみ権利という建物を正当に構築することができる。特権はまさに奉仕に比例して初めて獲得されうる。労働者それ自体は市民であるという理由で社会によって課せられた労働者に対する義務を経営者がもつなら、労働者もまた自ら同じ社会の成員であるという理由で第一の社会に対して義務を持つ。経営者によって必然的に行使されるコントロールにしたがって、労働者がその最善の奉仕をもたらす場合にのみ、労働者は特権を請求しうる。経営者がいかなるものであろうとあるいは労働者がいかなるものであろうと、共通の奉仕をもたらすために結合した人々に負わされる倫理的義務が企業の根底には存在している。(pp.91-92)
管理者の職業は、公共的なものになりつつある。彼は社会にたいする責務を自覚し始めているのである。われわれは実際に、少なくとも利潤とか個人的出世を考慮するのと同じくらい、倫理的考慮が方針における決定的要因として、産業の指揮に入り込んでいるのを見つけつつあるのである。このような考慮は、産業の製品のみならず、その方式の上にも社会が保有する権利にのっとっている。このような考慮が、協働社会が押し付けるような条件についての産業上の責任を引き受ける。(p.82) 戦時の仰天すべき産業の生産性は、奉仕という推進力の下で、なにが産業では達成されうるか、を示している。科学的組織化によって、世界の仕事は、各労働者が一労働日あたり四時間労働を寄与すれば達成できることが既に権威を持って概算されている。手工的労苦の時間を、現在の水準より僅少な割合に減らす科学的進歩はなされないなどと誰が知っていようか。研究、発明、組織、管理、および技術的熟練は、産業において人間の努力を通用する必要性を、われわれが可能とは考えないほど最少にするまで、産業の方法を徹底的に変える可能性を持っているのである。
社会にたいする奉仕は、物質的存在のために社会に必要な商品だけでなく、社会の進歩を可能ならしめるのに必要な市民をも供給することにある。したがって、産業の労働者は、単に商品生産の手段であるばかりでなく、一個人でもある。これは管理の社会的責務―すなわち産業の自得財産としてではなく、社会の改善のために産業に貸与された個人として労働者を見る責務―を形成する基本原則である。(pp.86-87)
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◆Carnegie, A. (1889/1990). The Gospel of Wealth. The Century Co. (田中 孝顕 監訳 『富の福音 企業の経営者は競争を勝ち抜くために、普段に経費の節減を考えていかなければならないが、なかでも人件費は生産費の中でもっとも大きく、目立つために、常に削減の対象となりやすい。そのため、経営者の苦境を知らない労働者は、目先の取り分を増やそうとすることだけに熱中する。したがって、労働者と経営者が衝突し、貧しい人と富める人とのあいだで絶えず争いが起きることになる。そして社会の発展とともに、古い時代にあった社会の調和が失われていったのである。(p.46) 富を運用することは、富める者の権利であるとともに責任でもある。なぜなら、蓄積された富を真に社会のために役立つように使うことの困難さは、富を蓄積する困難さと比べて少しも変わりはないのである。事業に成功して富を蓄積し、人生を全うしたとしても、蓄積した富を運用する責任を放棄してその責任を第三者に押し付けてこの世を去るようでは、富の活用の責任を全うしたとはいえないし、富める者としての当然の義務を果たしたとはいえない。つまり、遺贈は多くの場合、賞賛に値するものではないのである。(p.58) 富豪でなければ味わえない満足と幸福がある。その幸福とは、自分が生きている間に、苦役を目的とする財団法人を組織し、基本財産を起草することで、そこから生み出す利益をもって、社会に永久的に利益を与え続けることを自分の目で確認できるということである。そのような行為が、富豪の生涯を高尚なものにし、神聖なものにすることができるのである。主イエス・キリストは、「汝ら、兄弟たちのために働け」と教えたが、その心を忘れなければ、富める者がその富と自己の頭脳を使って、貧しい兄弟たちのために働く方法はいくらでもある。私が富豪と呼ばれる人たちの義務だと考えていることは、次のようなものである。まず、自分にどれだけの収入があっとしても、ぜいたくを避け、常に平素に暮らすことを心がけなければならない。自分の資産のうち、妻子には生活が成り立つ程度の小額の資産を与え、それを超える資産は、社会からの運用を信託された財産であり、自分はたまたまその受託管理者に選ばれたのだと考えなければならない。財産の運用は常に、どうすることが財産の信託者、つまり社会の利益になるかを熟慮したうえで行われなければならない。それは信託財産の管理者として当然の義務なのである。自分が信託財産の管理受託者にえらバラたのは、資金運用するための知識、才能、経験が、社会から評価された結果であるということを認識し、社会の個々の人たちがうんようするより優れた成果を得られるように、常に努力しなければならない。(pp.63-64) 富豪の援助が社会にもっとも役に立つ分野は、奨学金制度のように、人々が高いところに上る足場を作ることである。そして、その足場の利用を認めるのは、自ら高いところに上る努力をしている人に対してだけである。また、無料で利用できる公共施設、たとえば図書館、公会堂、公園、美術館などを提供するのは、富豪の責任である。なぜなら、このような施設の建設を税金に頼れば、より緊急度が高いといわれる施設への投資が優先するため実現が極めて難しいからである。(p.68) 慈善を行うということは責任をともなう行為である。慈善を行うものはその行為によって、援助を受けたものを結果的に堕落させないように注意しなければならないという、与えるものの義務を考慮したことがあるだろうか。(p.72) 自然が私たちに贈ってくれた美しさを多くの市民に分かち与えることも、大きな意義のあることである。たとえば、フィリップス氏がアレゲニー氏に寄贈した植物園内の温室では、四季を問わず世界中の美しい花が咲き誇り、濃い緑が人々の目を休める。その美しさに驚嘆した労働者が家族とともに再三、植物園を訪問して、美的感覚を養うことは、彼らにただいっぺんのパンを与えることよりも、はるかに優れたことなのである。なぜなら健全な身体を持ちながら、その人生を楽しむことのできない人を助けるのは国家の義務であり、個人レベルの問題ではない。(p.88) 株式会社のなかにもまれに成功する場合もあるが、この場合は実際に会社を支配しているのは一人か、あるいは一人が主導権を握って、実際の株主はせいぜい数人にとどまるのが普通である。株式会社組織の最大の弱点は、発明や冒険ができないということである。株式会社組織にとって最も重要なことは、毎期、定まった利益配当を株主に支払うことであり、会社を発展させることではない。もし実業界より富豪を排斥すれば、事に当たって危険を引き受けるものがいないため、将来の発展、改良に対して、大きな打撃を受けることになるだろう。
>top ◆UP:050222,REV:060412,0520,0913,0930,1207,070204,0216,0223
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