■ 6つの原則 ■
The Six Principles for Responsible Management Education
1 目的 (Purpose)
私たちは、学生が企業や社会全体のための持続可能な価値を将来にわたり築き上げていく人材となり、包括的かつ持続可能なグローバル経済のために働けるよう、その能力を開発します。
We will develop the capabilities of students to be future generators of sustainable value for business and society at large and to work for an inclusive and sustainable global economy.
2 価値 (Values)
私たちは、国連グローバル・コンパクトなどの国際的な取組に描かれたグローバルな社会的責任という価値を学術活動や教育内容に取り入れます。
We will incorporate into our academic activities and curricula the values of global social responsibility as portrayed in international initiatives such as the United Nations Global Compact.
3 手法 (Method)
私たちは、責任あるリーダーシップを目指した学習体験を効果的にするため、教育体系、教材、教育課程、教育環境を新たに創ります。
We will create educational frameworks, materials, processes and environments that enable effective learning experiences for responsible leadership
4 研究 (Research)
私たちは、持続可能な社会・環境・経済という価値の創造における、企業がもつ役割、推進力、影響についての理解を深めるための理論的かつ実証的な研究をします。
We will engage in conceptual and empirical research that advances our understanding about the role, dynamics, and impact of corporations in the creation of sustainable social, environmental and economic value.
5 連携 (Partnership)
私たちは、社会や環境に対する責任を果たす際の企業経営における課題を理解し、課題への効果的な取組をともに探究するため、企業経営者と交流を図ります。
We will interact with managers of business corporations to extend our knowledge of their challenges in meeting social and environmental responsibilities and to explore jointly effective approaches to meeting these challenges.
6 対話 (Dialogue)
私たちは、教育者、企業、政府、消費者、メディア、市民社会組織、及び、その他の関係諸団体、関係者を交えて、グローバルな社会的責任および持続可能性に関する重要課題について対話と議論の場を企画し、支援します。
We will facilitate and support dialog and debate among educators, business, government, consumers, media, civil society organizations and other interested groups and stakeholders on critical issues related to global social responsibility and sustainability.
私たちは、自分たちの組織における実践諸活動が、学生に伝えようとする価値や態度の手本として役立つべきであるものと考えます。
*6原則の邦訳は、PRME Main Documentより(MS-Wordファイル)
*他訳に以下のものがある。
・梅津光弘 (2008)「慶應―国連グローバル・コンパクト・プロジェクト」, 『G-SEC Newsletter』, 10, p.4 より (PDF)
・法政大学現代法研究所グローバルコンパクト研究センター「責任ある経営教育のための6原則」
企業の指導者は、地球規模の、文化的な、そして自然や環境、社会的、政治的な課題による、金銭に絡む事柄ではない不安定な(soft)事柄への深い理解を示さなければならない。私にはこれらの非・金銭的な事柄がますます重要になると思われる。全世界的な展望を導くことのできる賢明な指導者と呼ぶことができるようにするためには。
ゲオルグ・ケル,国連グローバルコンパクト事務局長
Georg Kell, Executive Director, United Nations Global Compact
■ どのようにPRMEが開発されたのか ■
How was PRME Developed?
PRMEイニシアチブは国際作業部会により開発され、バン-キムン国連事務総長が出席した2007国連グローバルコンパクト・リーダーズ・サミットで発足されました。以下の組織を構成員とする運営委員会によって調整が進められています。
Association to Advance Collegiate Schools of Business
(AACSB International),
European Foundation for Management Development (EFMD)
Aspen Institute’s Business and Society Program
The Academy for Business in Society (EABIS)
A Globally Responsible Leadership Initiative (GRLI)
A Association of MBAs (AMBA)
A Latin American Council of Management Schools (CLADEA)
Central and East European Management Development Association (CEEMAN)
Net Impact
United Nations Global Compact, which also hosts the PRME Secretariat.
■ 加盟方法 ■
How to join?
PRMEイニシアチブに加盟するためには、学術機関には次のことが求められます。
In order to join to the PRME initiative, an academic institution is asked to:
1. オンライン上の短い質問に答えることと、
2. 組織の長(最高責任者)によるPRME運営委員会宛の署名入り書簡を送ること
より詳しい情報と補足説明のについては PRMEウェブサイトよりアクセスできます。
PRMEに加盟するにあたり金銭的な負担は一切かかりません
PRME(プライム)の使命は、責任ある経営に向けた教育と研究、そして地球をひとつの単位として思慮を重ねたリーダーシップに活力をもたらし、支持することにあります。
PRMEのイニシアチブは、国連グローバルコンパクトのような国際的な価値を導き出すとともに、次世代のビジネスリーダーを育成するための経営教育体制(institution)とともに、絶え間なく改善を進めるプロセスの創設を模索します。
近年の学術環境において、企業の持続性と社会的な責任の動向について講義に採用されるようになってきたものの、まだ企業の経営に教育を結びつける戦略的な核心の部位にはなっていません。PRMEは、満を持して、すべての国にあるビジネススクール(経営管理大学院)と経営に関する学術機関を対象に、段階を踏みながら新たな事業に挑戦し、好機をつかむことを求めています。
PRMEは、持続可能性、社会的な責任、そしてよき企業市民という、普遍的に認知された価値を基礎として、教育課程、研究と教授方法の改編を全世界に求めています。漸進的ではありつつも、体系的な手続き(systemic manner)に従事することをお望みであれば、本イニシアチブではすべての学校の加盟を歓迎いたします。
上述は、The United Nations Global Compact Office. (2008). A Global Initiative: A Global Agenda(PDF), the United Nations Global Compact Office. より
本試訳は引用者(高田)による。
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■ 潘基文国連事務総長のメッセージ ■
「今日まで、PRMEイニシアティブは、国際的なビジネス・スクール団体によって非常によく受け入れられています。私は、このイニシアティブがグローバル・コンパクト諸原則の精神の下で、体系的な教育課程改革のための効果的な指導枠組みとしての機能を果たすと信じています。」
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■ 紹介記事 ■「国連グローバル・コンパクトと責任ある経営教育原則(PRME)――次の10年」
・Kell,G., and H, Jonas. (2011). "UN Global Compact and Principles for Responsible Management Education: the next decades (pdf)," Global Focus,5(2)., 14-16.
・以下は上記記事の試訳。
・誤訳・誤字脱字などあればお知らせください。
国連グローバル・コンパクトの10年後、ゲオルグ・ケルとヨナス・ハーティルはこれまでの成功をふりかえり、経営教育の役割を含めてその将来を展望する。
去年で国連グローバル・コンパクトが十年の節目を迎えました。このイニシアチブの次の10年にのりだすにあたり、グローバル経済の歴史において重大な局面に達してきました。
近年の雰囲気は10年前に、ある意味で驚くほど似ています。苦悩の絶えない金融的な調整の余波で国家の境目が高まり、企業の失策と投資家の強欲を越えて公共的な不満が広がり、そしてグローバリゼーションの道の向こうに蔓延する不確かな雰囲気があります。
結局のところ、グローバルな風潮と取引上の合意に近づき、貧困と飢餓を排除し、そして制度設計的な市場の失敗に抗して保護することへの努力は、まだ実を結び始めてはいないのです。
しかし、過去数十年の基本的な転換が興し、そして我々は――財務上、社会的、環境的、そして倫理的な用語では長期的な価値を企業にもたらすと定義される――企業の責任は、近年の困難な状況のいくつかに取り組むのとができると信じています。
そして企業の責任が世の趨勢を占めるようになれば、経営教育の意味するところは重要です。
まずなによりも私たちに企業の責任についてぜひ考えさせてください。活発な領域であり、また複数の動向が近年、あるアジェンダを形成してきました。過去10年を通して、gローバルコンパクトは数多くの重大な発展を目の当たりにしてきました。
企業の責任はグローバルに進む
2000年の発足時点ではわずか44社で始動しましたが、グローバル・コンパクトは今日、6,000の加盟企業と世界130カ国から非営利の利害者団体を擁する世界最大規模の企業責任に関するイニシアチブになりました。
加盟する企業はほぼすべての産業とセクターを代表するものであり、先進国、新興国、途上国に拠点を構えています。とりわけ中国、ブラジル、インドの新興国経済は、企業の責任領域に加入してきましたし、地域に根差した知見と最良の実践を構築しはじめています。
道徳性から重要性へ
誰にとっても善いことに尽くすことは、肝要なことで企業の責任に関するアジェンダのものとなる半面、もはやセールスポイントではありません。小さな流通業者か規模の大きな多国籍企業化にかかわらず、今日、企業の責任は戦略的で企業の統制に関する事柄になりつつあります。複数の企業がよりよい認識、リスクの緩和、機会獲得のためにグローバル・コンパクトに加盟しています。
グローバルについて、近年の最大級の二つの出来事
コンパクトの実施調査によって、価値の連鎖(ヴァリュー・チェーン)を通じて実施を推し進めるなかで、多くの企業はその責任に関することがらを経営戦略に統合しはじめていることが、これまでよりもいっそう明らかになっています。金融市場と企業の責任の関係はより強い結び付きをみせています。
数年前まで、自然環境、社会的、企業の統治事項(environment, social, governance: ESG)周辺で投資家たちを結集させる枠組みはありませんでした。しかし近年の地球規模の金融危機は、短期的な運用への関心を越えて、長期的で、持続可能な投資戦略にとって必要な事柄に拍車をかけるようになってきました。
今日、責任ある投資原則(the principles for responsible investment)を通じて、およそ20兆ドルの投資運用基金を代表する800以上の機関投資家たちが、投資分析と意思決定の中心において環境・社会・統治への考慮を認識している。共同で、機関投資家たちは企業の持続的な業績における完全に働きかけるための影響を活用している。
金融市場の統治を改善することは、PRIのような自発的なイニシアチブにしか頼ることができない。規制による支援を受けなければならない。だが、投資集団による環境・社会・統治事項の認識は、企業責任に関するアジェンダにとって強力な促進材料として働きかけてきたことは間違いない。
2007年に発足したPRMEには、現在、60カ国以上から、370以上の機関が加盟しています。
環境と企業責任のアジェンダは結びついている
過去数年間、社会的事項が企業責任の分野を幅広く占めつつある一方で、環境事項はますます企業責任に統合される部分であることとして認識を深めている。>16>要するに、企業倫理に関する周辺的な運動として起こってきた事柄は、世界中の企業実践の本流に組み込まれてきた。
今日、人権、労働基準、環境奉仕、そして腐敗防止を組み込むことが、戦略と統制において判断材料にすることは、ビジネスと社会にとって善いことだという認識が広がりつつある。
結果的に、経営教育はこの新しい現実に対応しなければならない。
2007年に発足した責任ある経営教育原則(Principles for Responsible Management Education: PRME)には、現在、60カ国以上から、370以上のビジネススクールと経営関連の学術機関が加盟しています。この原則のもとでは、社会的な目標に経済の均衡を保とうとする意思のある組織指導者の育成を目的とした教育課程、教授法、研究および誘因を向上させるべく、経営教育の提供者向けのガイドラインを提供しています。
PRME加盟機関は、持続可能性と企業の責任事項を教育課程や調査に一体化させる働きかけを継続的に促進することに挑戦してきました。複数のネットワークを束ねるネットワークとして、NETインパクトやオイコスインターナショナルのような学生組織と同様に、PRMEはEFMD,AACSB・インターナショナル、AMBA、CEEMAN,CLADEA、ASPEN研究所ビジネスと社会プログラム、グローバルな責任ある指導者イニシアチブ、EABISなどのような提携組織の活動に依拠しています。
ありがたいことに、世界各国のビジネススクールや他の組織におけるますます多くの事例とよい実践が、たんなる希望のみならず、目に見えるかたちで経営教育の転換が起こっているという具体的な実績をもたらしています。
以下はPRME加盟組織が6原則に取り組んだ事例です。
原則1(目的)と原則2(価値)
過去4年以上、PRME加盟機関は 持続可能性と企業の責任を教育課程と学術加藤堂に組み込む多種多様な取り組みに着手してきました。完全に新しいプログラムを作り出した加盟機関がいくつかある一方で、企業責任のテーマをたとえば学部、修士課程や博士課程など、より徹底して既存の専攻に含めてきたところもあります。
また、加盟機関の多くが国連グローバル・コンパクトや国連ミレニアム開発目標とおなじように、学生や研究者らにPRMEに加盟するよう働きかける個別の活動を始めてきました。
原則3(方法)と原則4(研究)
PRME加盟機関は、社会におけるビジネスの役割を学生が理解するように促すべく、たとえばサービス・ラーニングや実地調査プロジェクト、地域や世界の競争、ビジネス・シュミレーション、野外経験など経験にもとづく学習法を採り入れた複数の事例にもとづくさまざまな教授法を用いていることを報告している。
PRME加盟機関は、責任ある経営に関する研究を支援、促進または始動するため複数のイニシアチブを採り入れてきた。これらはたとえば近年の研究センターの再編やあるいは新規設立のように、PRMEに関する研究とともに教員と学生の努力を巻き込むものである。たとえばビジネスと気候変動との関係など喫緊の課題を理解するために学際的な研究用語を作り出したり、国や国際的な研究ネットワークに参画したり、PRMEに関する課題について競争的な研究助成資金に申請したり、現地調査に学生を伴わせたり、そして定期的な学部研究演習を提案したりしている。
原則5(連携)と原則6(対話)
PRME加盟機関によってさまざまな提携イニシアチブが開発されるなかで、次のものはもっとも期待の持てるものである。大学自治体制への持続可能性に関して専門性を有する産業界の専門家たちとの取り決め、企業責任に関するセンターやネットワークとの提携、そして企業責任の担当部署との共同作業である。
これらにとどまることなく、PRME加盟機関は、多様な利害関係者たちとの対話を育む数多くの活動に従事してきた。加盟機関はまた、政府、地域連携、協会、労働組合、NGOや情報組織に密接に協力してきた。
つまり、わたしたちは数多くの積極的な発展と革新をみてきたものの、企業の責任はまだ世界各国の経営教育における趨勢を閉めるには至っていないことを認識しなければならない。
とりわけPRMEが開催を予定する責任ある経営教育に関する第3回グローバル・フォーラムが行われる、来年(2012年)のリオ+20 国連・持続可能な開発サミットを考慮すると、さらなる統合と適応が求められている。
謝辞
PRME年次報告書(Sharing Information on Progress: SIP)にもとづいて、このセクションでの研究成果を提供してくれた作業グループの、ホセ・マヌエル・アルカラス(Jose Manuel Alcaraz)とマグダーレナ・W・マルチンコフスカ(Magdalena W. Marcinkowska)にお礼を述べたい。
筆者
ゲオルグ・ケル(Georg Kell):国連グローバル・コンパクト事務局長
ヨナス・ハーティル(Jonas Haertle):PRME事務局
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■ 文献・資料 ■
A
◆Alcaraz, Jose. Manuel., & Eappen Thiruvattal (2010). "An Interview With Manuel Escudero: The United Nations' Principles for Responsible Management Education: A Global Call for Sustainability.” Academy of Management Learning & Education. 9(3):542-550.
◆Alcaraz, Jose. Manuel. (2010). Sharing Information on Progress (SIP) A World of Inspiration; 1st Analysis Report (Activities 2008 - June 2010), PRME. 活動報告書の分析報告書(pdf)
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B
◆BizEd. (2007, Sep./Oct.). “a href="http://www.e-digitaleditions.com/i/57875/9" target="_blanc">Education Larders Meet with UN to Discuss CSR,
” Biz Ed. 6(5):8.