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製造物責任
(Product Liability: PL)

◇年表

1896 日 (明治29年) 民法(明治意31年施行)過失責任主義にもとづく不法行為損害賠償ルール確立(加藤 中村(1995, p.2)

1919 米 自動車の車輪欠陥による人身事故事件で、事業者は契約にない消費者に対しても過失責任を負うとする判決が下る。伊藤(1998)

1939 日 (昭和14年)鉱業法制定。無過失責任の考えが導入される(加藤 中村(1995, p.2)
1960 米 買い手の妻が自動車の欠陥に対して自動車製造業者と販売業者を訴え、保証責任が認められる。→契約関係にない被害者との関係においても過失の立証なしに事業者の責任が認められる。伊藤(1998)

1955 日 森永ひ素ミルク中毒事件。

1955 日 (昭和30年)自動車損害賠償保障法制定。無過失責任主義の考え方が導入される。(加藤 中村(1995, p.2)

1957 賠償責任保険(PL保険)開始。林田(1995, p.107)

1958 (-63)サリドマイド事件。伊藤(1998)

1960代 米 製造物責任制度の導入(世界初)。小林編(1998,2000)

1960代 サリドマイド事件。睡眠薬サリドマイドを妊婦がある時期服用すると、アザラシ状の手足を持った子供が生まれることがヨーロッパで明らかにされる。 小林編(1998,2000),原(1992, p.42)

1962米 カリフォルニア州最高裁判所で採用された厳格製造責任法理が、アメリカ法律協会(ALI)によって不法行為判例の第2次ステイトメント402A条に採用される。1960〜1970年代に各裁判所の判例として確立する。岡本ほか (1995, p.7)

1963 米 グリーンマン対ユバパワープロダクト事件。グリーンマン夫人が日曜大工道具を使用したときに跳ねた木片が頭部に当たり負傷した。工具メーカーのユバパワープロダクトが訴えられる。カリフォルニア州最高裁が、欠陥商品を市場に流通させた製造物責任を認める判決を下す。小林編(1998,2000),林(1995, p.7),加藤 中村(1995:8),原(1992, p.41)

1963 国民生活向上対策審議会が「消費者保護に関する答申」を発表。 伊藤(1998)

1965 米 第二次不法行為リステイトメントの採用で全米に拡大する。「不相当に危険な状態にある製品」による消費者被害について、事業

1966 米 全国国通自動車安全法。道路安全法制定。林田(1995, p.37)

1967 日 厚生省(当時)が医薬品副作用モニター制度制定。原(1992, p.16)

1967 米 食肉衛生法制定。林田(1995, p.37)

1968 消費者保護基本法制定。伊藤(1998) (houko.comへのリンク) 者に賠償責任を負わせるとする内容。林田(1995, p.8-9)

1968 カネミ油症事件。伊藤(1998)

1969 欠陥車問題 1972には京都地裁が自動車製造業者としては、事故の危険性を伴うことを想定した設計の注意義務があるとの判決を下す。伊藤(1998)

1969 日 リコール制度開始。自動車型式指定規則改正。ほかに回収命令などの権限を持つ法律として、消費生活用品安全法、有害物質を含有する家庭用品の規則に関する法律、薬事法、食品衛生法がある。また電気用品取締法、自動車型式指定規則は回収命令が明文化されていないが効果はそれに準ずる。原(1992, p.25,30-1)

1970-80代 米 PL保険金が急騰。一部の製品が保険の引き受けを拒否される(保険危機)。小林編(1998,2000)

1972 日 食品営業賠償共済設立。林田(1995, p.110)

1972 卵豆腐事件 サルモネラ菌を原因とした死亡事件について、売り手には信義則上買い手の生命・身体・財産上の損害の法益を害さないように配慮すべき注意義務があることを言う判決が下る。 伊藤(1998)

1972 輸入バトミントン負傷事件 流通業者を含めた消費者への注意義務と損害賠償請求が認められる。伊藤(1998)

1972 製造物責任研究会発足。我妻栄、四宮和夫らによる。加藤 中村(1975, p.8)

1973 米 ボレル対ファイバーボードーペーパープロダクツ訴訟 アスベストメーカーが提訴される林田(1995, p.13)

1974 日 通商産業省(当時)が事故情報収集制度を創設する。通産省が所掌する消費生活用製品の欠陥で人的被害や物的事故が起こった場合を対象に、製造・販売業者、製品安全協会、消費生活センター、消費者団体などから事例を収集する。原(1992, p.14)

1975 研究者の勉強会である製造者責任研究会が「製造物責任法要綱私案」を私法学会で発表する。小林編(1998,2000),加藤 中村(1995, p.8) ,原(1992, p.45)

1975 国民生活審議会(内閣総理大臣諮問機関)が、はじめてPL法導入を検討すべき胸の報告をする。加藤 中村(1995, p.8)

1975 米 ピント事件。フォード自動車が開発製造した小型乗用車ピントの製造物責任が問われる。→1978年カリフォルニア州地裁がフォードに対し総額1億2800万ドルの支払いを命じる。林田(1995, p.13-4)

1975 日 国民生活センターが危害・危険情報を収集し始める。全国294箇所にある消費生活センターに寄せられた相談辞令のうち、人身事故を引き起こしたもの(危害情報)、その恐れのあったもの(危険情報)を収集する。原(1992, p.13)

1976 伊藤(1998)EC EC指令。欧州評議会(CE)条約の実施。

1978 東京スモン事件 東京地裁は、東北帝国大学医科分館(図書館)に収められていたスペイン語の論文に掲載されていた記事の存在をもって、その知識を「当時手可能な科学技術知識の水準」として認定した。小林編(1998,2000)

1978 米 フォード・ピント事件。Anderson(1989=1994, p.318)

1979 日 特別許可法人 医薬品副作用健康被害救済基金(→被害救済・研究振興基金→医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に改称)設立。加藤中村(1992, p.108)

1982 日 薬害クロロキン網膜症事件に関する東京地方裁判所判例。(昭和57年、2月1日。判例時報1044号。判例タイムス458号p.187)輸入業者に製造業者と同様の高度の注意義務を認める。加藤 中村(1995, p.42)

1985 EC指令。EC閣僚理事会(The Council of Ministers)において各国のPL国内法を3年以内に統一するEC指令が採択される。小林編(1998,2000),加藤 中村(1995, p.8),原(1992, p.42)岡本ほか(1995, p.19)

1987 小林編(1998,2000) クロロキン事件第2次訴訟第一審判決 東京地裁は昭和34に海外専門雑誌に掲載されていた知識を「当時手可能な科学技術知識の水準」として認定した。

1985 EC EC指令が定めた期限までにPL国内法を準備できたのは、英、希、伊の3カ国。小林編(1998,2000)

1988 米 ブラウン事件 米カリフォルニア州最高裁は医薬品設計における欠陥には無過失責任を適用しないという判決を下す。小林編(1998,2000)

1988 日 塩素系と酸素系の洗浄剤の併用によって発生した塩素ガスによって主婦一人が死亡する事件が起きる(原(1992, p.)2))

1988 日 第12時国民生活審議会がPL法制定に向けた活動を開始する。加藤 中村(1995, p.10)

1990 米 連邦地裁でのPL訴訟件数が19,428件に達する。(提訴件数は数十万件)小林編(1998,2000)

1990 日 日本弁護士連合会と一部消費者団体とで「欠陥商品110番」を開設する。加藤 中村(1995, p.15),原(1992, p.6)

1990 私法学会で「製造物責任立法への提案」が報告される。小林編(1998,2000)

1991 日本弁護士連合会が「製造物責任法要綱」を、東京弁護士会が「製造物責任法私案」を発表。小林編(1998,2000)

1991 「消費者のための製造物責任法の制定を求める全国連絡会」結成。消費者運動団体、消費者相談員団体、弁護士、研究者らによる。加藤中村(1995, p.10-1,15),原(^1992, p.62)

1992 第13次国民生活審議会消費者政策部会が「総合的な消費者被害防止・救済の在り方について」を報告する。社会党、公明党がそれぞれ製造物責任法案を発表。小林編(1998,2000)、加藤 中村(1995, p.11)

1993 通産相諮問機関の産業構造審議会と第14次国民生活審議会消費者政策部会がPL制度導入を答申。PL法連立与党プロジェクトチーム結成。小林編(1998,2000)、加藤 中村(1995, p.12)

1993 厚生省中央薬事審議会が「製造物責任制度等特別部会報告」を答申を出す。加藤 中村(1995, p.12)

1993 米 ゼネラルモーターズ社製ビックアップトラック事件→93年ジョージア州フルトン郡裁判所がGMの製造物責任を認め、懲罰的損害賠償をふくめ1億520万ドルの支払いを命じる。林田(1995, p.14)

1994 日 製造物責任法成立(6月22日)。松下カラーテレビ火災事件。小林編(1998,2000)、林田(1995, p.89)

1995 EC EC指令に従ってPL国内法を定めたのは、加盟12カ国のうちフランスを除く11カ国となる。小林編(1998,2000)

1995 製造物責任法施行(7月1日)。小林編(1998,2000)

1995 日 家庭用電気製品業界が家電製品PLセンターを設立。加藤中村(1995, p.101)

1995 米 製造物責任制度改革法(Common Sense Product Liability Reform Act)可決。岡本ほか(1995,p.11)

1998 小林編(1998,2000) 新民事訴訟法施行(1996成立)において、文書提出義務が一般義務化され(224条3項)、文章やその他の証拠による立証が困難であるときは、要証事実自体を事実の認定としめた。



◇文献
The American Law Institute.(Ed.). (1998). Restatement of The Law Third,Torts;Products Liability(The American Law Institute. (=2001 森島昭夫 監訳・山口正久 訳 『米国第3次不法行為法リステイントメント――製造物責任法』, 木鐸社)
浅岡美恵 編 (1992) 『討論!PL法 欠陥商品と製造物責任』かもがわブックレット54 かもがわ出版 
伊藤進 (1998) 『製造物責任・消費者保護法制論』, 信山社
岡本佳世・小関知彦・平野晋・藤井英夫・松島成多・松田好信(1995)『企業のPL対策』, 商事法務研究会
加藤一郎・中村雅人 (1995 『わかりやすい製造物責任法』 有斐閣リブレ34
川井健 (1979) 『製造物責任の研究』 日本評論社
経済企画庁国民生活局消費者行政第一課 編 (1994) 『逐条解説 製造物責任法』, 商事法務研究会
小林秀行 編 (1998,2000) 『新製造物責任法体系(新版) 1[海外編]、2[日本編]』弘文堂
小林秀之 (1995) 『』, 弘文堂
原早苗 (1992) 『欠陥商品と企業責任』岩波ブックレット256
林田学 (1995) 『PL法新時代 製造物責任の日米比較』 中央公論社
松本恒雄 (1993) 「
市場経済における消費者私権と企業責任」, 『一橋ビジネスレビュー』 40(3)

◇PL法

第一条(目的) この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産にかかる被害が生じた場合における製造業者などの損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

第二条(定義) この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
 2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
 3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
  一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
  ニ 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者。
  三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

第三条(製造物責任) 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をしたあ製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、こうれによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。、

第四条(免責事由) 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
  一 当該製造物をその製造業者などが引き渡した時における科学又は技術に関する知見によって、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
  ニ 当該製造物が他の製造物の部分又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行なった設計に関する表示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

第五条(期間の制限) 第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害および賠償義務者を知った時から三年間行なわないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、動揺とする。
 2 前項後段の期間は、身体に累積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じたときから起算する。

第六条(民法の適用) 製造物の欠陥による製造業者などの損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による

◇論

過失責任主義(民709不法行為・民415債務不履行) 他人に損害を与えた場合であっても、故意や過失など主観的落ち度がない限り賠償責任をおう必要はないという原則。過失責任主義によって製造者が問われる場合には注意義務(予見可能性、結果回避義務)を高度に設定する必要がある。

製造物責任法理 製造者の過失を立証しなくとも、製品の欠陥の存在を証明することで製造者の法的責任を問うことを認める。

「欠陥」の基準 消費者期待基準 消費者が期待する程度の製品の安全性 標準逸脱基準 製品が通常の状態からどの程度逸脱しているかを基準とする。 危険効用基準 製品の有する効用と危険との比較を基準とする。

「欠陥」の定義 通常製造物が有すべき安全性を欠いている状態。瑕疵と異なり、製造物の客観的性状であり、安全に関わるもの。多数の判断要素を被害者が証明しなければならない負担を考慮するべきである。 製造上の欠陥 設計使用から逸脱した不良品(アウスライサー)。すべての製品に欠陥があるわけではなく、一定比率で生じることが不可避である場合。そのため欠陥の判断は、標準逸脱基準が採用されることが多い。ただし不良品発生の確率を下げることは製造コストとの関連付けによって判断されることが多い。

設計上の欠陥 立証されると、すべての製品が欠陥品と認められる。高度・最新の医薬品では消費者の期待基準が存在しない場合がある。

指示・警告上の欠陥 立証されると、すべての製品が欠陥品と認められる。説明書などに危険性が事前に明示されているときには、いかなる危険が生じても欠陥なしとされてしまう懸念がある。

開発途上の欠陥 商品製造時点の科学技術水準から被害発生を予測できかかったものの、使用によって判明した欠陥。例、薬害や食品公害。

取締り規制・ガイドライン 行政上の規制を満たしていた場合であっても、PLは認められる場合がある。ただし安全規制に適合していたかは欠陥判断の重要な要素である。

欠陥の要素



製造物の特徴 
(1)製造物の効用・有用性 包丁の切れる効用と危険性、薬の効用と副作用 
(2)製造物の使用・耐久期間 賞味期限、機会の老朽化
(3)製造物の経済性(価格対効果) 軽自動車における安全性。エアバックのオプション化。
(4)被害発生の蓋然性と程度 
(5)製造物の表示
(6)欠陥の部位

通常予見される使用形態
(1)合理的な予見  乳児用品を乳幼児が飲み込んだ場合 
(2)使用者による損害発生防止の可能性  使用に資格などの制約を課している場合、その人物であれば事故発生を防止できたか否かの判断。

時期
(1)製造物が引き渡された時期 その当時の社会において要請される安全性の程度への配慮。「改良品」と銘打ってもその程度を下回るものである場合。
(2)技術的現実可能性 欠陥を定義するときに製品引渡し時に合理的コストによって事故防止が可能であったかについての判断。

(3)その他
 天災と運不可抗力による損害は一般に免責となる。一方、不良品やアウスライサーの場合には欠陥が認められる。 因果関係
 東大病院ルンバール事件に関する最高裁判所判決(昭和50年10月24日)
 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を将来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判決は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」(加藤中村[1995:52])

「製造物」の範囲

未加工品 農作物・水産物・狩猟物などの第1次農産物 農薬、化学肥料、養殖、人工飼育、漁具、成長ホルモンなど高度な科学技術や化学製品を用いたものは未加工品に該当するか。自然の力を利用して生産されるものであり、人工的に加工された工業製品とは著しく生産形態が異なる。農林漁業者の保護を真の原因者に対する求償によって行われるべきである。農林漁業者に過度の危機管理能力を求めることは酷である。1次産品そのものの商品管理コストが高まる。1次産品をPLの対象範囲にする世界的なコンセンサスがない。

医薬品1(作用と設計) ドイツでは開発の抗弁を認めない薬事法が適用される。米カリフォルニア州最高裁は医薬品設計における欠陥には無過失責任を適用しないという判決を下す。また強制保険に加入させて消費者の救済を図る方法の是非(日本の医薬品副作用被害救済基金など)。

医薬品2(定義) 医薬品と他の生産物とを、また医薬品と(健康)食品とをどのように区別すべきかという定義の問題。移植用臓器、輸血、血液製剤は「製造物」に該当するか。

不動産 請負契約責任(民632条-)、土地考察物責任(民717条)があり、製造業者への負担が不当に大きくなる懸念。

開発危険の抗弁 製品の製造流通販売時における科学技術水準では予見できなかった欠陥について製造者を免責とする抗弁。抗弁の証明責任は製造者にある。しかし、この抗弁を容易に認めてしまうと審理の長期化、抗弁の濫用につながる懸念がある。該当時点での入手可能な最高の科学技術知識の水準が基準となる。医薬品、化学製品など長期の使用を通じて欠陥が徐々に明らかになる場合を除いて、一般に抗弁が認められる可能性は低い。例として、東京スモン事件、クロロキン事件、大腿四頭筋短縮症事件など。 部品・原材料製造業者の抗弁 製造業者が行った設計に関する指示に従ったため、部品・原材料・中間製品に欠陥が発生した場合には、それを製造した業者の抗弁が認められることがある。発注や受注について元受・下請け関係を考慮する必要がある。

法人などの事業者損害(営業損害) PLは本来消費者保護を目的としていること。事業者間取引は、事前の契約を対等な立場で取り交わされることが多い。ただし、事業者と非事業者の区別をつけることは容易ではない。また機会の欠陥で生産がストップした際の賠償を工場労働者だけではなく、会社も機会メーカーに対して損害賠償を請求できるのかについての判断の必要性。



賠償限度額の設定

訴訟以前に製造者側に要求する証拠や文書請求の範囲

製造者が特定できない場合の消費者救済策 海外の製造業者や輸入業者などを消費者が訴えることは困難である。またより安全で信用ある製品を製造輸入させるための対策をとるべきである。



 アメリカにおける弁護士報酬制度や懲罰的損害賠償などにみられるようにPLが訴訟社会を招来するという懸念がある。



製造物責任法理の根拠



 製造者に比べて消費者の能力は圧倒的に低く、製品を信頼した消費者を保護するほうが公平である。最新の技術を用いた財サービスに内在する危険を公平に分配するべきである。

 製造者は製品の欠陥を減らす努力をするため、より安全で欠陥のない製品を製造者に期待できる。

 消費者の損害補償を製造者に負担させることによって、その負担が製品価格に上乗せさる。社会全体で消費者への補償を少しずつの負担をする間接的な保険制度の働きを期待できる。

 製品価格にその損害賠償分が上乗せされることになると、相対的に安全な製品が安くなる。過失責任主義の下で生じる、危険な製品が低価格のためによく売れ、安全な製品が駆逐される現象を避けることができる。

 安全性や検査手続きなどの行政法規(業法・公的規制)の存在によって、外国製品が日本に輸入されるさいに障害となってきた(非関税障壁)。しかしこの行政法規が製品の安全性の保証に一定の効果を挙げてきた。この「非関税障壁」を低くするために、製品の安全性の保証は業者の自己責任に帰せられるべきである。

 製品事故の責任は国際的に調和、統一されるべきである。

 安全性の確保を怠った企業の社会的責任を法的に問うことが容易になる。

 黙約説 消費者と製造者の間には製品の品質について目次の保証が成立していると考える学説。



製造物責任法理の学説<

契約責任構成 保証契約説 製造者は自己の製品の品質に責任を負うという明示的、暗示的保証にもとづいて消費者との交友契約を結んでいる。製造者・消費者間に直接の保証契約の存在を認めるとする説。製造者は製品の品質、性能に関する表示をする。その表示内容が消費者の購入の動機付けとなる。この関係が欠陥についての積極的製造物責任を保証することとなるかという論点。

連続的売買公正説 製造者と消費者とのあいだには、契約関係がないことを前提とする。両者のあいだには、連続的売買関係があり、これは偶然に連続的な転売ではない特別の法的関係にあるとする説。

従物構成説 製造者の責任を追求する権利が連続的売買のなかで製品とともに移転する。フランスにおける直接訴権を応用した説。

民法570条拡大適用説 同条の売主規定を、製品欠陥による損害に関する責任を問う場合には製造者に読み替えて適用できるとする説。

準契約責任説 製造者と消費者との間には明示的契約関係はないものの、特殊の信頼関係があり、新義足により支配される契約類似の法律関係にあると考える説。この特殊な関係には、信義則から製造者の消費者に対する保護義務が導かれる。

債権者代位権転用説 民法423条の債権者代位権に直接訴権利を仮託(転用)できるとする説。保険金の請求権を同規定で転用した例があり、製造物責任に同様の転用を認めるべきと考える。

開発危険(development risk)の抗弁

 製品を市場においた時点の科学又は技術に関する知見によっては当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった場合には、それで被害が発生してもメーカーは免責されます。(加藤 中村[1995:56])

 もしこの抗弁を認めて製造業者等を面責任すると、製造業者等が消費者をモルモットにして製品開発をすることを容認することになります。また、製品を市場においた時点の科学技術の水準で発見できたかできなかったという予見可能性の有無を争点にすることは、訴訟を長期化させます(実際、スモン訴訟では予見可能性の有無を審理するために長時間を要し、このあいだに多数の被害者が、判例を見ることなく他界した被害者がでました。HIV訴訟でも、ここを争点にして訴訟が長期化し、原告が死亡する例が出ています)(加藤 中村[1995:58-9])。

部品・原材料製造業者の免責

 …部品・原材料に欠陥があって事故が発生した場合の原則は、部品・原材料の製造業者が製造物責任を負うことです。(加藤 中村[1995:57])

不法行為責任構成 法欠陥・無過失責任説 議論がなされた昭和30年代の過失概念が、実質無過失責任を実現しうるほど柔軟でなかったため、法創造による無過失責任を積極的に肯定すべきとする説。

民法717条拡大適用説 民法717条の工作物責任を製造物責任に拡大処理しようとする説。

民法709条拡大適用説 民法709条に定められた「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」の規定における過失の内容を解釈し、実質的に無過失責任を認めるべきだとする説。判例の積み重ねによって、現在の製造物責任は民法709条の解釈論として論じられている。

 PL法は、損害賠償の方法につき特別の規定をおきませんでしたので、6条により、民法の金銭賠償の原則に従うことになります。しかし、金銭賠償の原則を採用した理由からすれば、原状回復が可能ならば原状回復の方法で行なうことまで規定するものではありません。実際、メーカーが、欠陥ある製品を欠陥のない新品と取り替えたり、修理したりするのは、契約上の債務不履行の修復や歌詞修補の義務の履行と解することもできますが、1つの原状回復が行なわれていることになります。加藤 中村[1995:68]

 不真正連帯債務 複数の人がそれぞれ別個の立場で同一の債権者に対して一定の責務を負う場合に、各自の債務がたまたま同一の目的を有するため、一人の履行があれば他のものの債務も消滅する関係のこと。加藤中村[1995:62]





日本のPL制度 製造物責任法条文(houko.comへのリンク)

未加工の第1次農林水産・狩猟物を対象外にする。

損害賠償責任の限度額を設定しない。

開発危険の抗弁を認める。

例えば自動車の欠陥によって被害受ける乗客や歩行者は消費者とはいえない。損害に対する事業者・非事業者の区別は必ずしも容易ではない。

製造物は動産であり、不動産も対象外とする。これにより電気等エネルギーやサービス、コンピュータソフトウェアが適用除外となった。ただしエネルギー供給の危機についての欠陥やソフトウェアを組み込んだ機械の欠陥は動産の問題であるため、同法の適用対象となる。

輸血用血液製剤である全血製剤、血液成分製剤、ワクチンを含む医薬品はPL法の対象とする。ただし欠陥の判断については製品の特殊性を考慮する。

中古品は欠陥判断の基準が緩和されるとしても「製造・加工された動産」としてPLの対象となる。だが廃棄物は利用の予定されていないことが明らかである場合には欠陥との因果関係を否定されると考えられる。部品・原材料そのものに欠陥がある場合にはそれを製造提供した業者に責任がある。

販売業者を責任主体から除外する。ただし、製造の委託販売業や他企業の商標を付して別企業の経路から販売する製品(OEM商品)など、流通販売経路の多様化を考慮する。例えば、「(実質的な利益を上げている実質的製造者)製造元A製薬、(知名度の高い会社)販売元B製薬」という表示はA社がB社のブランド力とそれにたいする消費者の信用を利用して製品を販売しているため、B製薬に責任を負わせることが公平だとする判断。

自ら当該製造物の製造業者として製造物に氏名、商号、商標その他を表示したものを製造者として責任主体とする。また製造者と誤認させるような表示をしたものも責任主体とする。

被害者またはその法定代理人は、損害および賠償義務者を知ったときから3年で時効が消滅する。また、製造業者が製造物を流通させたときから10年間で時効が消滅する。

製造物責任法に規定されていない部分については民法の規定が適用される。過失相殺(民722条2項)、共同不法行為(民719条)、金銭賠償の原則(民722条1項、417条)、公序良俗(民90条)



アメリカのPL制度

ディスカバリー(証拠開示制度)   トライアル(口頭弁論)の前に、トライアルの準備にむけた情報収集。証言録取書(deposition)、質問書(interrogatories)、文書や物品の提供、身体・精神検査、自白の要求などを行うことができる。

 訴訟当事者が相手方に質問をしたり、書面の提出を求めたり、関係者の尋問を要求した場合に、相手方はこれwに応じなければならないとするアメリカなどの制度です。PL訴訟等のようにメーカー側に証拠が偏在している事件では、被害者側の立証を助ける強力な手段になります。(加藤 中村[1995:54-5])

陪審制度  陪審員たちと同じ立場にある被害者(消費者)に有利に作用する傾向にある

懲罰的賠償制度(punitive damages) 適用は加害者に悪意がある場合にのみに限られる。実際に補填すべき損害賠償とは別に再発防止や加害者への懲罰を目的とした賠償。

弁護士の成功報酬(contingent fee)制度 依頼時には金銭を要求しないものの、勝訴した場合に、依頼人が受け取る損害賠償のうち2割〜5割程度が報酬として弁護士に支払われる。この結果、訴訟が容易になるとともに、判決を下される賠償額の高額化の傾向にある。

コラテラル・ソース・ルール 弁護士、社会保障から副次的な給付を受けても、PL判決の結果に影響を与えないとする制度。

欠陥の基準 カリフォルニア州やアラスカ州では欠陥の基準を一時的には消費者期待基準を用い、それで欠陥を認定できなかったときに、危険効用基準によって判断される。さらに危険効用基準で判断される場合には、製造者に製品の効用が危険の効用を上回ることの証明義務を課している。



欧州連合(EU)のPL制度

EC指令  1985年にEC閣僚理事会が各国のPL国内法を統一するEC指令を採択する。内容は



欠陥の存在を前提とした無過失責任の認定。

「欠陥」の定義は人が正当に期待できる安全性を欠くことであり、その基準は消費者の期待による(消費者期待基準)。

損害発生時に欠陥があれば、製品が流通された時点から欠陥があったこととして推定する(蓋然的推定)。

欠陥や損害の因果関係を証明するのは被害者である。

当該製造者の科学技術水準を勘案して、不可抗力的欠陥については製造者を免責する。

製造者が特定できない場合には、製造者以外にも、輸入業者、流通業者も製造者責任が問われる。

EC指令の対象は動産に限り、不動産は各国の裁量に任せる。

EC指令には賠償すべき損害範囲に事業(者)損害はPLとして認められていない。

EC指令の対象として電気は含まれる。

第一次農産物、狩猟物への適用、製品製造販売時に予見できなかった欠陥について開発危険の抗弁、責任限度額の設定については各国の裁量にゆだねた。

諸外国のPL制度 オーストリア、ノルウェー、フィンランドでは強制保険によるPLの履行を確保している。また医療品事故のPLは、医療品保険によって救済が図られている。




林田学 (1995) 『PL法新時代 製造物責任の日米比較』 中央公論社


第一部 アメリカ
 第一章 厳格責任論理の誕生とPL訴訟の爆発
 第二章 変革の流れ


第二部 日本
 第一章 PL紛争をめぐるこれまでの環境
 第二章 PL問題をめぐる今後の展開

 従来のアメリカ法の考え方によれば、製品事故の被害者がメーカーを訴えるにはメーカーの過失が問題とされた。しかし、この判例は過失(negligence)に代えて欠陥(defect)を要件とし、新しい理論を打ち樹てたものである。このように製品事故における賠償責任を欠陥という点から基礎づける考え方を、アメリカでは厳格l責任(strict liability)と読んでいる。(p.8)

 このときにも、アメリカのいわゆる事件屋弁護士たちがいち早く動き、犠牲者の遺族らを依頼人とする高額の損害賠償請求訴訟が相次いで起こされた。このような動きに対し、コネチカット州のリーバーマン司法長官は「被害者の不幸を利用して利益を得ようとする弁護士の存在は許せない」と憤り、「これでは被害者の真の救済にならないのではないか」と懸念した。(p.26)

 …訴訟のためにかかった費用は合計で70万ドルにも達し、1986年度のスキー場の賠償責任保険の保険料は2倍には値上がり、80万ドルに近い額になってしまったからだ。莫大な経費の増加にみまわれた他産業と同様、アルバイン・メドウ社はその経費増をそのまま消費者にまわした。リフトの一日利用権が24ドルから26ドルに値上げになったのだ。(p.42-3)

 



加藤一郎・中村雅人 (1995) 『わかりやすい製造物責任法』, 有斐閣リブレ34

 製造物責任というと、製造物から生じる責任を広く差すように思えますが、これは、欠陥さえあれば、過失がなくても損害賠償責任を負うという特別の意味に使われているのです。これは、わが国で言えば欠陥による無過失責任、英米法で言えば厳格責任(strict liability)ということになるわけです。(p.2)

 事業担当の象徴は、基本的に産業の保護育成を目的としており、背後の業界と密接な関係があります。業界の協力も必要ですが、業界の利益を守ることが、役所の利益にもなるのです。(p.5)

 輸入業者は、製造業者というよりは流通業者ですが、自己の意思にもとづき製造物を国内市場に流通させた者として、製造業者と同じ立場に立つこと、被害者が外国の製造業者に損害賠償を請求するのは困難であること、輸入業者は外国の製造業者に求償するのは困難であること、輸入業者は外国の製造業者に求償することが可能でかつ比較的容易であることから、本法において責任主体に含めることが適当であるとされました。EUなどの諸外国の立法例も、輸入業者を同様に扱っています。(p.41)

瑕疵担保責任(民法570,566条)、債務不履行責任(不完全履行(p.50)

 わが国の民法は、金銭賠償の方法によることを原則としました(民法722条1項・417条)。これは、もっとも簡易で便利で普遍的だから採用された原則です。PL法は、損害賠償の方法につき特別の規定を起きませんでしたので、六条により、民法の金銭賠償の原則に従うことになります。しかし、金銭賠償の原則を採用した理由からすれば、原状回復が可能ならば原状回復の方法で行うことまで禁止するものではありません。(p.68)



原早苗 (1992) 『欠陥商品と企業責任』, 岩波ブックレット256

 製品が悪かったのか、消費者の使用方法などを間違っていたのかで争いになっています。消費者側からみれば、きちんとした原因究明をしてくれないというのも不満です。メーカー側には軽微な事故にみえ原因究明に費用や時間をつかいたくないという気分もあるのでしょうか。もっぱら説得になり、ほかに同種の被害があるかどうかも知らされません。(p.11)

 日本では消費者の苦情のうちかなりがメーカー、販売店に持ち込まれ、いったん持ち込まれるとその情報はなかなか公のものにはなりません。苦情は個別的に相対交渉で解決されますから、製品が悪かったのか消費者の使い方が悪かったのかで争われる場面も外からはうかがいにくいものになっています。(p.22)

 こうした裁判では、原告である被害者が、損害が発生した、その製品の製造にあたってメーカー側に責められるべきところ(故意・過失)があったかどうか、その過失で損害を生じたこと(因果関係)を、かなり高度のがい然性まで証明しなければなりません。そうして、ようやく被害者側の言い分が認められるわけです。(p.35)

 不法行為責任を、日本では民法709条で「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ損害ヲ賠償スル責ニ任ス」と条文にはあるのです。(p.37-8)

 しかし、不法行為責任をもってきても、いまは相手方の責任を問うのに無理があるし、過失主義の限界が感じられます。技術kが高度化し、過失があったか否かが問題となる設計や生産工程が複雑化して、ブラックボックスに入ったなかで、私たち消費者には、相手方の「故意」「過失」でなく、違う用件に置き換えられないか、企業、消費者ともにどうすれば証明負担が公平になるのか、製造物責任の考え方は、これを超えるものとして生み出されてきました。原則を相手方に「過失」があったかどうかでとうのではなく、製品に「欠陥」があったかどうかで責任を問う考え方です。(p.39)


浅岡美恵編 (1992) 『討論!PL法 欠陥商品と製造物責任』, かもがわブックレット54 かもがわ出版 

 その理由は、形状から首を挟む可能性は使う側で分かるはずだから、消費者側が十分に注意して使うべきだ。メーカーは素材の安全性、つまり簡単に折れたり曲がったりしないように注意するだけでいい。あとは消費者が安全に使うだろうということを信頼して出荷すればいいのであって、欠陥はない−というものです。この裁判所の見解は製造するメーカ側からの視点だけで判断していて、消費者の側からの視点は完全に落ちています。(p.10)

 なにが不満なのかということを分類しますと、約五つに分けられます。ひとつは一方的に「あなたの使い方が悪い、誤使用だ」と言われるパターンです。二つ目は原因究明をしてくれないと言う不満です。これは自動車に多いようです。(…)三番目は「原因究明はしてくれたが、結局よくわからなかった」と言う不満です。これは高度技術を集積した製品が多くなっていうることの反映かと思われます。四番目は、(…)「ほかにも同じような被害があるのかどうか、製品回収や改良の努力が行われるのかどうか、全く教えてくれない」という不満と同時に「自分はたまたま命は助かったけれど、同じようなことがほかでもあったら大変だ」と思われて電話されてきた方が非常に多いということです。五番目は補償額や対応に不満という内容です。(p.16)

 (…)アメリカにはヘルメット会社が存在しないそうです。昔はあったのですが、すべてPL訴訟で負けてつぶれてしまったというのです。オートバイの事故の場合、生身の人間が直接ぶつかることになりますから、頭を強打して志望につながる事故が多くなります。アメリカでは、そうした事故においてもヘルメット会社が訴えられるケースが非常に多く、アメリカのヘルメット会社だけでなく、アライヘルメット社も訴訟を受け、すべて負けてきたそうです。(p.22-3)

 産業界や通産省は、SGマーク制度によって簡易迅速な被害救済がなされているから立法化は必要ないといっていますが、この制度自体が欠陥制度であることがお分かりいただけるでしょう。そもそも製品安全協会が安全基準を定めているのですから、事故が起こってもおなじ協会で設計や警告における欠陥が認められることは期待できません。(p.279

 そしてその技術はメーカーのノウハウとして門外不出です。決して公表されることはありません。特許の申請さえ、技術を公表することになりかねないからしない、という世界です。ましてや自己情報やどんな危害があるのか、どういうことが問題なのかということを外部に持ち出すことは一番したくないことですから、外からはとても手の届かない奥深いところにしまいこまれています。(p.28-9)



松本恒雄 (1993) 「市場経済における消費者私権と企業責任」, 『一橋ビジネスレビュー』, 40(3):30-40

 裁判所は、製造者の過失の推定を積極的に行なったり、あるいはきわめて高度に設定することによって、事実上の無過失責任化を実現しているとの評価が一般的である。しかし、過失責任主義の下で、勝つ裁判官に因る事実認定のためには高度の蓋然性の立証が必要とされているため、裁判所として「目いっぱいの立証」を要求し、弁護団もこれに応えようとするので、これらの判決を獲得するのに現実には10年近い歳月が掛かっている。(p.34)

 結果のみを要件とする無過失責任主義の下では、発火するテレビは正当に期待しうべき安全性を欠いていることは明白であるから、被害者はテレビが出荷したという事実のみを証明すればよい。放火などの別の原因は問題になりうるとしても、工学的・技術的な争いは不要になる。(p.35)


岡本佳世・小関知彦・平野晋・藤井英夫・松島成多・松田好信(1995)『企業のPL対策』, 商事法務研究会
第1章 製造物責任法によって何が変わるか
第2章 企業実務からみた製造物責任法
第3章 製造物責任と企業の対応

製造物責任の特徴(p.5-6)
@過失に代えて欠陥を要件とする。欠陥は「通常有すべき安全性を欠いていること」と定義され、その有無は「製造物の特徴」「通常予見される使用形態」「製造物を引き渡した時期」その他「製造物に係る事情」を考慮して判断される。設計上の欠陥・製造上の欠陥・警告状の欠陥の分離は行っていない。
A対象物は「製造物又は加工された動産」とされ、未加工農林水産畜産物、不動産、ソフトウェア・伝記などの無体物、サービスは含まない。
B被害者が立証責任を負う。欠陥や因果関係の存在、欠陥の存在時期などについて法律上推定する規定を置いていない。
C賠償されるべき損害には精神的損害や宇部かりし利益など欠陥と相当因果関係のあるすべての損害を含む。ただし、懲罰的損害賠償を認めない。
D消費者に生じた損害だけではなく事業者に生じた損害も含む。
E損害賠償額について上限も下限も設けない。
F拡大損害を生じた場合の損害賠償額には製品自体の損失も含まれる。
G開発危険の抗弁を認める。
H部品・原材料製造者の抗弁を認める。
I責任期間は10年だが蓄積損害・遅発損害について、起算点を損害が生じたときとする。
J被害者の経過質についても過失相殺を認める。
K保険加入の共生など損害賠償履行確保措置の共生は行わない。
L販売業者、賃貸業者、リース業者などは責任主体としない。

@アメリカでは確かに契約関係がない場合の消費者の救済のため厳格責任が発達したが、その後PL危機を招いてその行き過ぎが反省されてきており、またECでは市場統合のための競争条件の整備が主目的で1985年にPL指令が出され、消費者保護だけが目的ではなかったこと、A現在においても日常の生活必需品など多くは個人経営者がつねに高度の技術や情報を持っているとは限らず、またB商品の競争が激しく安全や事故に関する費用をPL保険や製品の価格に転嫁する可能性はむしろ少なく、消費者んるが故に保護されるというのは妥当でないこと、C製品の安全な使用について製造業者は法令上一定の事項の表示を義務付けられている場合が多く、そうでない場合でも製造業者は取扱説明書などで相当詳細な情報提供が為されているが消費者はこれを十分に読んでいないことも多く、消費者んるが故に情報がないとは一概に言えないこと、D事故が起こった場合、自己に関係した製品は消費者の所有に属し、事故の状況、自己時までの使用状況などの事故原因解明に必要な情報や証拠は消費者側に偏在していて、証拠が製造業者にある(または「消費者にない」)とはいえないこと、E現在の高度情報化社会、高学歴社会の中で消費者は製品の欠陥について疑問に感じた場合にはそれを解明する手段がいろいろあること、F消費者なるがゆえに保護すべきだ知う考えかたは悪質な消費者を利することになって、悪化は良貨を駆逐するような結果を招くことなどが指摘された。
 その結果、本法は、たんに消費者を保護するための社会政策立法ではなく、製造物の欠陥による損害に関する紛争を解決するための規範として、民法の不法行為の特則とされ、消費者のみならず、事業者をも含んだ製造物の欠陥による被害者の保護を目てk地圧し、また製造物を直接購入していない第三者やプラントの操作をしていた作業車など製造物の消費者出ないものも保護の対象とされたため、消費者の保護という言葉は見送られたのである(pp.55-56)。

すなわち、被害者の救済に片寄った無過失製造物責任法では、本当に理不尽に危険な製品だけではなく、いわば無差別に製造者等に責任を課したためmに、社会に有用な製品まで市場から追い払ってしまい、悪い製品のみを排除するための信の抑止力が効かないという失敗を生んでしまった。このように、無差別製造活動に一括して責任を課してしまったという愚を避けるためには、あらゆる欠陥様態に対して純粋な無過失責任を課すのではなく、むしろ「落度」(Fault)や非難可能性(blame-worthiness)等に基づいて本当に責任を課すべき場合をきちんとくべ映るような細かく調整されたルールを確立するように製造物責任法を整理し直すべきである、というのが、「事故抑止力」を製造物責任の目てk地圧して重視する近年の傾向である。(p.57)



小林秀之 (1995) 『』, 弘文堂
第1章 製造物責任訴訟(PL訴訟)と「訴訟社会」
第2章 主要各国の製造物責任法制の概要
第3章 製造物責任法と証明問題
第4章 アメリカ製造物責任訴訟の現状
第5章 製造物責任訴訟の日米比較
第6章 国際製造物責任訴訟
第7章 「法と経済学」的考察と裁判外紛争処理




The American Law Institute.(Ed.). (1998). Restatement of The Law Third,Torts;Products Liability(The American Law Institute. (=2001 森島昭夫 監訳・山口正久 訳 『
米国第3次不法行為法リステイントメント――製造物責任法』, 木鐸社)


第1章 販売時点での製品の欠陥に基づく製品販売業者の責任(製品一般に適用される責任ルール;特別の製品もしくは製品市場に適用される責任ルール)
第2章 販売時点での製品の欠陥に基づかない製品販売業者の責任(不実表示によって惹起された被害に対する、製品の販売業者もしくは配給業者の責任;販売後の警告懈怠により惹起された被害に対する、製品の販売業者もしくは配給業者の責任 ほか)
第3章 事業承継者および見掛け上のメーカーの責任(被承継者が業として販売した欠陥製品によって惹起された被害に対する事業承継者の責任;事業承継者自身による販売後の警告懈怠によって惹起された被害に対する事業承継者の責任 ほか)
第4章 一般的適用規定(因果関係;積極抗弁;定義)




経済企画庁国民生活局消費者行政第一課 編 (1994) 『逐条解説 製造物責任法』, 商事法務研究会


第1編 総説
第2編 逐条解説
第3編 関係資料




伊藤進 (1998) 『製造物責任・消費者保護法制論』, 信山社


1 消費者保護法制論(消費者保護法制の課題―消費者私法をめざして;消費者保護法制の仕組みと課題 ほか)
2 約款規制論(約款規制の動向;販売約款 ほか)
3 製造物責任論(消費者被害救済と製造物責任;欠陥商品と製造物責任 ほか)




040709作成
060528,060622,060717,100329更新
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