> うまなり[Home] / BOPビジネス(低所得者・貧困層対象事業)

BOPビジネス(低所得者・貧困層対象事業)
Base/Bottom of Pyramid Business

 

年表 / ウェブサイト / 文献・資料 / ニュース
 / 議論 

年表


)(江橋 編, 2009, p.100)

>top


 

文献・資料

A

◆アシル・アハメッド・大杉卓三 編 (2009) 『BOPを変革する情報通信技術――バングラデシュの挑戦』, 集広舎

◆シナジー (2010) 「特集 BOPビジネスの実態」, 『シナジー』,145, 24-33.

◆フェルダー直子 著、森友環莉 訳 (2005) 『入門 マイクロファイナンス――世界を貧困から救う、新しいビジネスモデル』,  ダイヤモンド社

◆原英次郎 (2010) 「ポストBRICs戦略として脚光 40億人の市場を狙うBOPビジネスの潜在力」, 『週刊東洋経済』,6257, 90-91,

◆Hart, Stuart L. (2005). Capitalism at the Crossroads: The Unlimited Business Opportunities in Solving the World's Most Difficult Problems. Wharton School Publishing. (=2008 石原薫  訳 『未来をつくる資本主義 世界の難問をビジネスは解決できるか 』, 英治出版)

◆平成二二年二月BOPビジネス政策研究会 (2010) 「政策クローズアップ BOPビジネス政策研究会報告書〈要約〉--途上国における官民連携の新たなビジネスモデルの構築」, 『月刊経営士』, 693, 6-9

◆服部篤子・武藤清・渋澤健編 (2010) 『ソーシャル・イノベーション――営利と非営利を超えて』,  日本経済評論社

◆日高克平 (2008) 「共生型ビジネスモデルとBOP市場」 日本経営学会 編 『企業経営の革新と21世紀社会』, 千倉書房

◆肥本英輔 (2010) 「BOPビジネス最前線レポート アフリカ編 アフリカの潜在力に賭ける日本企業の取組み」, 『JMAマネジメントレビュー』,16(11), 49-53.

◆藤本大規 (2010) 「世界を変えるデザイン展――シンプルなPPキャップ、PEネットが命を救う。BOPビジネスの市場規模は5兆ドル 」, 『コンバーテック』,38(9), 40-42.

◆石川和男 (2009) 「BOPマーケティングの一視角――「貧困層」を消費者にするために 」,  『専修商学論集』, (89), 1-10.

◆伊藤薫 (2010) 「経済観測こぼれ話(8)BOP市場は日本企業のターゲットなのか――当面は長期的視野での取組みが必要に」, 『産業新潮』, 59(6), 22-25

◆ジェトロセンサー (2010) 「BOPビジネス 先行事例に学ぶ」, 『ジェトロセンサー』,60(717), 39-59.

◆JMAマネジメントレビュー  (2010) 「海外通信・放送の動向 開発途上国における携帯電話サービス市場の開拓――BOPビジネスへの挑戦」, 『特集 勃興するBOPビジネス 』,16(7), 7-19.

◆角地弘行・伊藤千恵 (2010) 「BOPビジネスの最前線 ウガンダを照らす未来の灯火--三洋電機 (特集 アフリカ 離陸の条件) 」, 『外交フォーラム』,23(4), 40-43.

◆角田晋也 (2009) 「気候変動を見越した水ストレスが高い農業地帯でのBOPビジネス」,  『MACRO REVIEW』,23(1), 5-11.

◆加藤庸之 (2009) 「貿易投資関係情報 官民連携によるWin-WinのBOPビジネス 」,  『日本貿易会月報』, (670), 40-42.

◆加藤庸之 (2009) 「官民連携によるWin-winのBOPビジネス (特集版 貿易記念日) 」,  『経済産業公報』, 16763, 22-25.

◆経済産業省貿易経済協力局通商金融経済協力課 (2009) 「ビジネスの芽 官民連携によるWin-WinのBOPビジネス」,  『ジェトロセンサー』, 59(705), 38-40.

◆経済産業省貿易経済協力局通商金融経済協力課 (2010) 『BOPビジネスのフロンティア――途上国市場の潜在的可能性と官民連携』, 経済産業調査会

◆木村陽介 (2010) 「注目を浴びるBOPビジネス (新ビジネスモデル・ア・ラ・カルト――大和総研HPレポート「新ビジネスモデル研究」から) 」, 『大和総研の新規産業レポート 』,67, 46-48.

◆国際協力機構 (2008) 『本邦企業のBOPビジネスとODA連携に係る調査研究報告書』,国際協力機構 pdf

◆小木曽麻里 (2010) 「貧困改善しながら成長するBOPビジネス」, 『アエラ』,23(58), 42-44.

◆小山智  (2010) 「貿易投資関係情報 BOPビジネス普及拡大に向けた政策支援の方向性――途上国における官民連携の新たなビジネスモデルの構築 」, 『日本貿易会月報』,679, 7-11

◆小山智 (2010) 「官民連携の新たなモデルに 脚光浴びるBOPビジネス――途上国の低所得階層をwin-win-winで支援 」, 『金融財政business』,10074, 14-19,

◆小山 智 (2010) 「動きだした世界、期待される日本――ビジョンからアクションへ--BOPシンポジウム報告」, 『金融財政business』, 10078, 14-16

◆三井久明・鳥海直子 編 (2009) 『よくわかるマイクロファイナンス』,  DTP出版

◆みずほリサーチ  (2009) 「今月のキーワード BOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)」,  『みずほリサーチ』,93, 13.

◆水尾順一 (2010) 「戦略的CSRの価値を内包したBOPビジネスの実践に関する一考察」, 『駿河台経済論集』, 20(1), 1-36.  → pdf

◆長坂寿久 (2010) 「BOPビジネスとNGO――CSR=企業とNGOの新しい関係(その3) 」, 『国際貿易と投資』,22(1), 51-70.

◆中原 裕美子 (2010) 「視点(第74回)ビジネスは貧困を救えるか--BOPビジネスの可能性」, 『Int'lecowk』,65(10), 20-22.

◆日本貿易振興機構海外調査部 (2010) 『BOPビジネス潜在ニーズ調査』,  日本貿易振興機構

◆野村総合研究所・平本督太郎 (2010) 『BOPビジネス戦略――新興国・途上国市場で何が起こっているか』, 東洋経済新報社

◆小田兼利  (2010) 「BOPビジネスの最前線 粉を混ぜれば、きれいな水のできあがり――日本ポリグル (特集 アフリカ 離陸の条件)」, 『外交フォーラム』,23(4), 44-47.

◆大杉卓三 (2009) 『BOPを変革する情報通信技術――バングラデシュの挑戦』, 集広舎

◆Prahalad, C.K. (2005). The Fortune at the Bottom of the Pyramid. Upper Saddle River, N.J. : Wharton School Pub. (=2005 スカイライトコンサルティング 訳 『ネクスト・マーケット――「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』, 英治出版→ 2010 増補改訂版)

◆ラーマン,アシフル・アハメッド,アシル・大杉卓三 (2010) 「バングラデシュにおける大規模マイクロファイナンス機関の事業拡大の課題と展望――グラミン銀行、ASA、BRACの事例より 」, 『九州大学アジア総合政策センター紀要』,4, 85-93.  → pdf(QIR)

◆佐藤寛 (2009) 「(特集 BOPビジネスの可能性) 」,  『アジ研ワールド・トレンド』, 15(12), 2-33.

◆佐藤寛 編 (2010) 『アフリカBOPビジネス――市場の実態を見る』, ジェトロ

◆澤田貴之 (2010) 「複合事業体としてのBRACとグラミン銀行――バングラデシュのBOPビジネスの事例を中心として 」, 『愛知大学国際問題研究所紀要』,136, 197-216.

◆Schiller, Bradley R. (2007). Economics of Poverty and Discrimination, The 10th Edition. Prentice Hall. (= 2010 松井範惇訳 『貧困と差別の経済学 原著第10版』, ピアソン)

◆菅正広 (2008) 『マイクロファイナンスのすすめ―貧困・格差を変えるビジネスモデル』,  東洋経済新報社

◆菅正広 (2009) 『マイクロファイナンス―貧困と闘う「驚異の金融」』,  中央公論新社

◆菅原秀幸 (2009) 「BOP ビジネス――日本企業の特性と可能性 」,  『北海学園大学経営論集』,7(2), 99-11

◆Sullivan, Nicholas P. (2007). You Can Hear Me Now: How Microloans and Cell Phones are Connecting the World's Poor To the Global Economy. Jossey-Bass. (=2007 東方雅美・渡部典子  訳 『グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換』, 英治出版)

◆菅原秀幸 (2010) 「Japanese Business in the BOP Market: Sources, High Potential and Some Issues(分権型社会における地域自立のための政策に関する総合研究(II)) 」, 『開発論集』,85, 25-46.  → pdf(CiNii)

◆菅原秀幸 (2010) 「BOPビジネスの源流と日本企業の可能性」, 『国際ビジネス研究 』,2(1), 45-67.

◆鈴木豪 (2010) 「企業特集 味の素――1円で「味の素」を販売 現地化徹底で途上国BOPを開拓」, 『週刊ダイヤモンド』, 98(16), 108-111.

◆週刊東洋経済 (2010) 「日本企業の「アフリカBOPビジネス」最前線 (徹底解明! 地球最後の新興市場 アフリカの衝撃) 」,  『週刊東洋経済』, 6240, 56-63,

◆高橋雅央・木原裕子 (2010) 「BOPビジネスとは何か」, 『Business research』,1035, 78-87.

◆高橋暢雄 (2010) 「転換期における能動的経済活動――CSRから国際連帯税へ」, 『武蔵野短期大学研究紀要』,24, 9-19.

◆高岡伸行 (2010) 「BOPビジネスモデルの編成原則の探求」, 『和歌山大学経済学会研究年報』, 14, 399-416. → pdf(CiNii)

◆高山丈二 (2010) 「企業収益の確保と社会課題の解決--BOPビジネスの取組み 」, 『レファレンス』,60(6), 27-48.

◆田原総一朗 (2011) 「世界を変える「BOPビジネス」の新潮流。(新連載・1)」, 『潮 』, 623, 80-87.

◆田原総一朗 (2011) 「世界を変える「BOPビジネス」の新潮流(2) 山口絵理子――「途上国発のブランド」で世界に勝負を挑む。」, 『潮 』, 624, 142-149.

◆坪井ひろみ (2006) 『グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援』,  東洋経済新報社

◆槌屋詩野 (2009) 「BOP市場戦略にみる「新世代企業」考――新興国・低所得層市場戦略の成功と失敗から」,  『Business & economic review』, 19(12), 254-269.

◆塚越 由郁  (2010) 「BOP市場への道を拓く (アジア中間層 8.8億人"新内需") 」,  『エコノミスト』, 88(20), 39.

◆取出恭彦 (2010) 「今月のR&D最前線 BOPビジネス,ソーシャルビジネスとイノベーション」, 『研究開発リーダー』,60(717), 58-59.

◆上地球二 (2010) 「KDDIの新たなグローバル戦略--成長市場であるBOP市場への参入」, 『ITUジャーナル』,40(7), 37-39.

◆宇高衛 (2010) 「海外通信・放送の動向 開発途上国における携帯電話サービス市場の開拓――BOPビジネスへの挑戦」, 『ITUジャーナル』,40(7), 47-51.

◆United Nations Development Programme [UNDP]. (2009). Creating Value for All: Strategies for Doing Business With the Poor. (= 吉田秀美 訳 『世界とつながるビジネス――BOP市場を開拓する5つの方法』, 英治出版)

◆鷲沢毅 (2010) 「カンボジアの電力事情」, 『電力土木(Electric power civil engineering)』,345, 129-131.

◆渡邊奈々 (2007) 『社会起業家という仕事――チェンジメーカー』,  日経BP社

◆安浦寛人 (2005) 「BOPに向けたビジネス戦略(2025年半導体デバイスの進化予測,デザインガイア2008-VLSI設計の新しい大地)」, 社団法人電子情報通信学会,『電子情報通信学会技術研究報告』,108(301), 51-53.

◆Yunus, Muhammad. (2008). Creating a World Without Poverty: Social Business and the Future of Capitalism . PublicAffairs. (=2008 猪熊弘子  訳 『貧困のない世界を創る―― ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義 』, 早川書房)

◆安浦寛人 (2005) 「BOPに向けたビジネス戦略(2025年半導体デバイスの進化予測,デザインガイア2008-VLSI設計の新しい大地)」, 社団法人電子情報通信学会,『電子情報通信学会技術研究報告』,108(302), 51-53,

◆Yunus, Muhammad. (2010). Building Social Business : The New Kind of Capitalism that Serves Humanity's Most Pressing Needs. PublicAffairs. (=2010 千葉敏生  訳 『ソーシャルビジネス革命――世界の課題を解決する新たな経済システム』, 早川書房)

>top


◆Schiller, Bradley R. (2007). Economics of Poverty and Discrimination, The 10th Edition. Prentice Hall. (= 2010 松井範惇訳 『貧困と差別の経済学 原著第10版』, ピアソン)


第1部 貧困と不平等の諸側面
 第1章 不平等と貧困の考え方
 第2章 不平等
 第3章 貧困者を数える
 第4章 世界における貧困と不平等
第2部 貧困の原因
 第5章 労働力参加
 第6章 ワーキング・プア
 第7章 年齢と健康
 第8章 家族の規模と構成
 第9章 下層階級
 第10章 文化と人種
 第11章 教育と能力
 第12章 教育における差別
 第13章 労働市場における差別
第3部 政策オプション
 第14章 福祉プログラム
 第15章 社会保険プログラム
 第16章 雇用政策
 第17章 機会均等政策
 第18章 将来の方向と展望

 人格が問題であるとする説の理論的な基礎は、人的資本(ヒューマン・キャピタル)という経済学上の概念にみられる。誰もがある一定の能力を持っているというところから出発する。問題は、その後の投資を通じてそれらの能力が開発され拡大されるかということである。学校に行き与えられた宿題をこなすことは、個人の生>8>産能力を増加するための時間の投資を表す。簿記の夜の授業を受けている小売業の店員は、その努力の結果さらに良い仕事を見つける機会を期待している。(…)
 人的資本理論が意味することは、他の人よりも先に進むことができるのはそのような必要な投資をする個人(や家族)であるということである。したがって、それら投資をしない人たち――貧困者――が非難できるのは彼ら自身しかないというのだ。彼らが宿題をするよりもMTVを見ることを選んだのだ。とつ別の科目を受講するために、夜の時間や週末を犠牲にすることを欲しなかった。(…)
 欠陥人格説と人的資本理論との間には3つの本質的なリンクがある。第1は、人的資本は市場に置いて報酬をけるものだという前提である。(…)合理的選択という家庭も人的資本モデルにはある。人々はその選択肢について知っている必要があり、それらの中から選ぶことができる。彼らが自発的に間違った選択をするのであれば、彼らの貧困は理解することができる。
 最後に、欠陥人格説を支える人的資本理論からの説明は、機会はどこにでもあるという前提に依存している。この観点からは、所得をもってあげようと望む人は誰でも、必要な努力、つまり人的資本投資をすることで、そうすることができる(pp.7-8)

 貧困の別の説明は、困窮は個人のコントロールを超えた環境から生じたものであるという。この議論、機会制約説、によると、困窮者は良い学校、仕事、そして所得への適切なアクセスを持たないがゆえに貧しいのであるという。彼らは人種や、性別、所得階層に基づき差別されているのである。その結果、少しでもよくなろうとうするための教育、職業、住宅を手に入れることができない。政府のサービスさえも拒否される。こういった外的障壁のため、少々の労働意欲や努力では貧困からの脱出は難しい。
 機会制約説は、欠陥人格説の重要な前提を否定する。個人が教育を得るための平等な機会を持たないならば、彼らの人的資本の欠陥は彼らが行ったはずの悪い選択によってはうまく説明されない。(…)
 機会制約説が基本的に意味することは、われわれが貧困であると数える人々の人数を減らすことが重要であるならば、機会を増やすことtが必要であるということである。機会を増やすことによって、質の高い教育、子ども支援のためのより良い実施、新規の仕事の口、医療や子供のケアへの更なるアクセスをもたらすかもしれない。(p.9)

 ビック・ブラザー説と呼ばれるこの議論は、安定した家族や経済的自立へのインセンティブをつぶしてしまうのは政府のせいであると批判する。この見方からは、貧しい人々はそもそも欠点を持っているわけではない。そうではなく、政府が高い税や福祉政策、人種の割り当てなどその他の公共政策を通じて、人々の考えや行動を歪めているのであるという。これらの政策は、貧困者を助けることを意図しているが、実際は人々の労働意欲を阻害し、ジョージギルダー(George Gilder)が「依存による荒廃」(blight of dependency)と呼ぶものを作り出す。>10>たとえば、福祉による需給が得られることは、人々の働く意欲をそいでしまう。政府がオプションとして働かない人に福祉給付を与えることは、低賃金で長時間働くことを決定的に魅力のないものとする。(pp.9-10)

 貧困と雇用は両立しないように思われるが、ワーキング・プアの低賃金を説明する要因はたくさんある。貧困者は、教育が低い、経験不足で、技能レベルは低く、地理的にも不利なところにいるし、職業上の訓練は間違っている。彼らはまた、低い賃金で一生懸命働く大波のような移民労働者と競合しなければならない。
 これらの説明をそれぞれ支持する根拠はたくさんある。しかし、これらの説明は労働市場での供給サイドにのみ焦点を当てていることに注目すべきである。労働市>145>場に個人がもたらす特性については語るが、なぜそれほど低い賃金しか支払われていないかは説明しない。賃金が決まるプロセスを理解するためには労働市場での需要サイドがどのようになっているかも検討しなければならない。
 最も一般的にいって、労働者の賃金は産出物に対するその人の貢献、つまり限界生産力によって決まる。しかし、パイプ修理人の生産物を広告会社社長のそれより価値を低くしているのは何なのか。これら2人の所得の違いを生み出しているのはそれぞれの生産の物理的算出ではなく、社会がそれらに付与する価値なのである。もしも、社会が突然に広告会社の商品に魅力を失い、修理されたパイプにより価値を見出したならば、パイプ修理人の所得は、それぞれの生産物の形にかかわらず、広告代理店の社長のそれを上回るだろう。同じような理由から、もし社会が貧困者が生産し作り出す種類の生産物により多くの価値を与えるなら、ワーキング・プアの所得は増加するであろう。(pp.144-145)

 所得が減少し高まる支払いに直面する高齢者は貧困に陥るリスクがますます高まる。多くの高齢者にとって、チャンスはもうなくなる。過去の労働や節約した分はたいていの場合、困窮化を引き延ばすにすぎない。では、高齢者は実際にはそのような困難な状況でどのようにやりくりしているのだろうか。それに対する最も簡潔な答えが、上院委員会における公聴会で出された:
     「貴女はどうやってやりくりしていますか?」と私が尋ねると、この婦人は「きついですよ、パットさん、それは、とても厳しいのです。」と答えた。
     「でも、どうしていますか?」ときたら、別の人が「何もしないのです。」「これが、私達がなんとかやりくりするやり方なのです。」と答えた。
     「しない、何もしません」が高齢者の退職後の生活の最も正確な記述なのである。娯楽はしない。友人と出かけることはしない。外食はしない。映画には行かない。      >166>新しい服を買わない。地下鉄やバスには乗らない。ケーキを買わない。たくさんは食べない。身体のケアをするべきほどにはしない。しない。しない。何もしないのだ。
 こうして、高齢者の多くにとって、年を取ることは何もなくなるまで一つ一つあきらめていくことなのだ。その時が来ると、ただ、死を待つことのみができる。その前に、彼らは何の疑いもなく貧困状態になっている。(pp.165-166)

 貧困者に向けて執拗に浴びせられる2つの非難がある。1つは、貧困者は子供が多すぎるというもので、もう1つは彼らは安定した家族を維持しないというm小野である。その両方の意味することは、貧困者は人格に欠陥がある、つまり彼らは自分をコントロールできないし、彼ら自身の球場には自己責任がある、というものである。(…)もしそうであるならば、貧困者は、十分な所得をもたらす仕事を保持することが困難、または不可能であるような条件を自ら作り出し、自らの貧困を招いたという主張には幾分の正当性があるかもしれない。
 因果関係を確立するには事柄の順序を明確にすることが重要であるが、それだけで何が原因かという問題を解決することにはならない。家族の不安定が貧困へ陥る前に起きるケースでさえも、欠陥人格だけが唯一の説明ではないかもしれない。機会の制約が、家族の崩壊に寄与した李、結婚の魅力を制限したかもしれない。福祉のシステム(ビッグ・ブラザー説)もまた、家族の分裂や子供の多さへのゆがんだインセンティブを創出するかもしれない。(p.175)

欠陥人格説 歴史的にみて、黒人の一人親家族の存在を「説明する」ことにはほとんどためらいはなかった。1920年代になるまで、「獣欲説」「道徳腐敗説」や「原始的セクシュアリズム」などが、アメリカにおける黒人家庭の崩壊の多さの証明として出されてきた。そこに通底する考えはいつも、黒人は、その家族関係を道徳的、身体的、及び文化的に維持することができないので、彼ら自身貧窮に責任があるのだという。この欠陥人格説の支持者は経済的機会が増えたにもかかわらず、家族の不安定は悪化していることを強調する。そして、黒人家族の不安定の方が同じ程度の所得、教育、及び住宅事情の白人家族より高いことを指摘する。
ビック・ブラザー説 ビッグ・ブラザーの反家族政策、特に福祉政策、にその責任を認める人々もいる。国の最大の福祉プログラムは、女性が世帯主の家族には自動的に所得の支援を与えるが家族が無傷の場合の支援は確実ではない。この仕組みが家族の崩壊という逆のインセンティブを与える。それが、結婚して自身の家族を持つことではなく、自己自身だけの家計を持ってしまう>185>インセンティブを未婚の母親にもたらす。結果は家族の安定を脅かす「依存による荒廃」である。
機会制約説 増大する貧困の女性化を説明するまた別の説は、男性への機会制約を強調する。この見方は最初、1960年代半ばに出された。当時連邦政府の労働副長官(のちの上院議員)であったダニエル・モイニハン(Daniel Moynihan)が、失業率と家族構造の関係に注目した。失業率と家族構造の傾向を調査し、彼は別居や離婚率は経済的事象の後に密接に起きていることを見つけた。黒人女性の別居率は経済が悪くなると一挙に上がり、経済状況がよくなると低下している。家族の安定性は、明らかに経済事象の結果得あり原因ではない。家族が失業や困窮の高まりに直面するとき、稼ぎ手としての父親の立場は擁護できないものとなり、離婚、別居や蒸発が起きる。(pp.184-485)

 口伝えによる採用方法は、効率的ではあるが、よい仕事からマイノリティを排除する傾向がある。マイノリティの潜在的な応募者は良い雇用機会へとつながる友人のネットワークを持たないことが多い。したがって、彼らは往々にして良い機会があることに気がつかないし、採用担当者の目に留まるようにもならない。意図的な差別はないとしても、マイノリティは実質的に新しい仕事のポジションからは断ち切られている。
 企業の外部での採用活動でも、均等なアクセスがいつも保障されているわけではない。会社は一般的に言ってマイノリティ領域、特にゲットー地域では、そこでどのような人々や技術が手に入るのかあまり知らない。そのため、会社は伝統的な方法や、白人により多くアクセスを持つリクルートの会社に依存することになる。マイノリティの潜在的な応募者もまた、よく知らない会社や雇用仲介会社にアプローチするのをためらう。偏見があることを知っていて、彼ら自身明らかな差別の経験から、マイノリティの求職者はあえて困惑やハラスメントの可能性のある状況に身を置くことにはためらいを感じる。そのかわり、身近な情報や、地域で公平な扱いをすることで十分に知られた会社に頼ることになる。雇用機会均等に最近になって転換した会社は、その意図を十分に伝えるのは難しい。(p.267)

 

>top


◆United Nations Development Programme [UNDP]. (2009). Creating Value for All: Strategies for Doing Business With the Poor. (= 吉田秀美 訳 『世界とつながるビジネス――BOP市場を開拓する5つの方法』, 英治出版)


1 すべての人に価値をもたらす―利益と幸福を生むビジネスチャンス
  ビジネスチャンスは貧困削減のチャンス
  インクルーシブビジネスの制約要因
2 BOP市場開拓の5つの戦略
  製品とビジネスプロセスを貧困層に適応させる
  市場の制約を取り除くために投資する
  貧困層の強みを活かす
3 ケーススタディ―インクルーシブビジネス実例集
  伝統的なアグリビジネスを変革(ブラジル)
  貧しい農民のためのコンピュータ(中国)
  衛生的なトイレを作って不可触民を解放(インド)

 インクルーシブビジネスでは、支払方法や価格をうまく設定すれば、貧しい顧客やサプラ>89>イヤーのキャッシュフローの特徴に適応させることができる。その特徴とは、収入が少なく不安定であること、そして金融サービスの利用機会がないことだ。収入が少なく不安定だからといって、消費や投資がまったくできないわけではない。将来に使う分までまとめ買いするような大口の支出ができないのである。
 預金やクレジットや保険を利用できなようになると、貧困層が資産を管理する選択肢は限られてしまう。多くの貧困層は、日銭を稼ぎ、日々必要なものを少しずつ買う暮らしをしている。一方の農民は農作物の収穫後に現金収入を得るのだが、作物の種類によっては、まとまった現金収入の機会が年に一度しかないという場合もある。
 インクルーシブビジネスでは、このような貧困層のキャッシュフローの特徴に合った支払方法を設定すべきなのだ。
 貧しい消費者の購買行動に合わせるため、広く石鹸から携帯電話に至るまで取られている販売方法がある。商品を小分けにし低価格で販売する方法だ。シャンプーから香辛料まで今やあらゆる日用品が小さな袋に入れて売られている。
 このモデルは水の供給(スマートカードやコイン式)からスラブのコイン式トイレまで幅広く用いられている。プリペイド式なので、企業は利用者に料金を踏み倒されるリスクを負わないですむ(pp.88-89)

 いくつかのマイクロファイナンスのモデルは、担保や書類を全く要求しない代わりに、グループ貸し付けを通じて形成されるインセンティブを活用している。たとえば、ロシアのふぉ留守銀行は、修士を踏み倒すと、そのあと自分が融資を利用できなくなるばかりでなく、同じグループの他のメンバまで利用できなくなってしまう。返済不履行は、恥をかき、仲間から相手にされなくなるというコストを伴う制度になっているので、利用者が返済するインセンティブはとても高い。(p.92)

 伝統的な農作物保険では、保険会社は損失評価によって補償金を支払う方法をとるが、多くの国で失敗してきた。この方法では、加入者は作物の損失額を実際より多く申告したり、ねつ造したりして、より多くの保証金を得ようとしてしまう。つまり、保険会社にとっては府のインセンティブが加入者に働いてしまうので、保険会社はモニタリングや農村レベルの監査を高いコストをかけて行わざるを得ないのである。
 一方、BASIXが開発した降雨インデックス保険は、どこでも入手可能な降雨量の情報に基づいて支払い金額を決定するため、加入者に負のインセンティブを与えずに済む。このため補償金支払いや事務作業を大幅に削減することができたのである。(p.93)

 インクルーシブビジネスには、少なくとも四つの戦略が同じように重要なのだ。すなわち、制約要因を取り除くための投資、貧困層の能力の活用、他のアクターが持つ資源や能力と協力すること、政府との政策対話である。(p.96)

 多くのインクルーシブビジネスは、めざす顧客層や生産者、従業員や零細事業主に対して、研修やマーケティングや教育などを実施して、知識とスキルを高める投資をしている。一方、戦略マトリックスからも分かるように、規制環境をより効果的にするという目的のための投資はあまり行われていない。企業には規制をつくったり履行を強制したいrする義務も能力もないからである。企業ができることと言えば、現行の規制を組織内で履行することか、自分たちの活動を規定するルールをつくることくらいである。
 貧困層市場の制約を取り除くために投資すれば、私的な価値と社会的な価値を新たに創造することができる。
 私的な価値とは企業自身が得られる利益であり、企業は制約を除去するために投資を行うことで品質と生産性を向上させ、市場の需要を刺激することができる。また新しい技術やサービスの開発が進み、会社の知名度が上がり、競争力が高まる。社会的価値とは、一企業の利益のとどまらず社会で共有される便益のことである。たとえば、企業が従業員に対して教育や研修を行うと、労働者のスキル>102>は高まる。従業員は転職したり、他の事業を行ったりするので、スキルの高い労働者が増加した便益は社会全体に及ぶと言える(p.101)

 知識・スキル・インフラ・金融商品・サービスなどの制約要因を取り除くと、企業は目に見える利益を手にするだけでなく、無形の長期的な利益も得られる。たとえば、ブランドのイメージ、従業員のモラル、い企業の評判、新しい製品やサービスを開発する能力、競争力の強化などだ。これらの長期的な利益を着実に自社のものにできるならば、市場の制約要因を取り除くために行った投資は、費用対効果が高くなるのだ。(p.109)

 注意深く設計された補助金の事例として、マリ共和国の家庭エネルギー開発・農村電化庁が国際援助機関の支援を受けて創設した補助金がある。農村に電力サービスを提供する企業を増やすために創設されたもので、農村への拡大にかかる費用の70%までを補助している。これで電力会社は料金をほぼ半額に設定することができ、電力を利用できる世帯が増える。電力>117>会社の利用率が20%を超えると、補助金は減額される仕組みである。(p.116-117)

 貧困が蔓延し、先進国では当たり前のフォーマルな制度(契約の履行強制など)が存在しない地域では信頼がこれに代わる役割を果たしてくれるからだ。インクルーシブビジネスを成功させるためには、地域に根差すことと、信頼を築くことが、同じくらい重要である。貧しい人々が何かを決めるとき、個人的な経験や人間関係が大きな決定要素となるので、これらをうまく使えば、新規参入する企業は、彼らの警戒を解き、新しい顧客の信頼を得られるようになる。(p.130)

 今ージョンは、人類学の研究や開発援助の実務から始まった手法で、単に観察者ではなく参加者として、貧しいコミュニティに長期にわたって関与するものである。企業から派遣された者やプロジェクトのファシリテーターが、スラムや農村を二〜三カ月かけて訪問し、住民との関係を築き、kその関係を生かし、コミュニティの持つネットワークの支援を受けてビジネスモデルを作り上げるのだ。(p.138)

 グループを使ってルールを守らせるシステムは、マイクロクレジット以外のビジネスにも形を変えて生かされている。たとえばマニラ・ウォーター社は、料金徴収システムやパイプラインからの盗水防止にグループを活用した。同社は、貧しいコミュニティで水道接続の役割を担う協同組合を立ち上げた。コミュニティ全体の水の使用量を計測するためにメーターの親機を設置し、各世帯の使用量を計測するためにはサブメーターを設置した。コミュニティとしては親機に記録された使用料の支払いをする一方で、各世帯はサブメーターの記録に基づいて、コミュニティーの代表に支払いをしなければならない。この結果、コミュニティでは誰一人として盗水を許さなかった。さらに、事業管理費はコミュニティに移管されたため水道料が安くなるというメリットもあった。(p.141)

>top


◆UP:100522,0523,0524,1028,1111,110226