目次
第一版序文 (1976)
第二版序文 (1977)
1 実際的提案
2 基礎となる原理の一般化
3 貨幣創造についての政府特権の起源
4 政府特権の絶え間ない濫用
5 法貨の神秘性
6 グレシャムの法則についての混乱
7 並行通貨と貿易鋳貨についての乏しい経験
8 民間名目貨幣の発行
9 異なる通貨を発行する銀行間の競争
10 貨幣の定義についての補論
11 競争通貨の価値を統制する可能性
12 公衆はどのような通貨を選ぶであろうか
13 貨幣のどのような価値が妥当なのか
14 われわれの目的にとっての貨幣数量説の有用性
15 望ましい貨幣供給の動き
16 自由銀行業
17 全般的なインフレーションやデフレーションは再び生じないか
18 金融政策は望ましくなくまた可能でもない
19 固定為替相場制よりもよい規律
20 別々の通貨圏があるべきか
21 政府の財源調整と支出に対する影響
22 過渡期の問題
23 国家からの保護
24 長期的な展望
25 結論
付録 1 1950-75年間の通貨価値下落
付録 2 検討のための問題
訳者あとがき
参考文献
索引
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1 実際的提案
「この提案はまず第一に、契約及び経過にどのような通貨を用いることも全く自由であるということはもとより、これらの国々の間ではどのような種類の為替管理あるいは資金移動の規制も撤廃されるということを意味するものであろう。つぎにさらにこの提案は、これらの国々に存在するどの銀行も、他のどの国においても、そこで設立されている銀行と全く同一の条件で視点を開設する機会を持つことを意味するものであろう」(…)「公衆がこの新しい可能性を熟知するようになるとすぐに、真正な貨幣を提供するという本道からの逸脱があればいつでも、粗悪な通貨は直ちに他の通貨によって排除されるということになるであろう」(P2)
「この計画は各国政府が自らの措置がもたらしたもたらした有害な結果に対処して、その発行する通貨を「防衛」しようとするのをそしっするであろうということ、そして、そのことによりこれらの有害な措置が各国政府によってさらに用いられることが阻止されるであろうということである。各国政府はつぎのようなこと、すなわち、その発行する貨幣の価値下落を隠蔽すること、また貨幣、資本及び他の資産が国内で優位に用いられることができなくなる結果として、それらが国外へ流出することを阻止すること、あるいはいろいろな価格を統制することなどはできなくなるであろう。」(P6)
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2 基礎となる原理の一般化
「日常の取引において一種類の貨幣のみを扱い、そして使い慣れている種類の貨幣以外のものを用いることの利点をその時々に考慮しなくてもよいという便宜差のために、周期的なインフレーションと不安定性というかたちでどれだけの代償を払っているか。」(P11)
「紙幣は金属貨幣よりも政府が扱うのに適しないものであり、また政府により乱用されやすいものでさえあるのである」(P11)
3 貨幣創造についての政府特権の起源
「歴史上の経験は一見、金のみが安定通貨(stable currency)を供給することができ、そしてすべての紙幣は早晩減価するに決まっているという信念を正当化しているようにおもわれる。」(P)
「現代における政府の拡大は、政府赤字を貨幣発行により補うことが可能であるということにより大いに助長されてきたのである。そしてこれは通常そうすることにより雇用を創出するという口実にもとづいてなされてきたのである」(P19)
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4 政府特権の絶え間ない濫用
「歴史は通常は政府によって政府の利益のために仕組まれたインフレーションの歴史であることを、誇張であるとは思わないのである」(P22)
「政府というのはその権力を立派な貨幣を提供するために少しでも用いることは決してしなかったのであるが、金本位制度が貸しているような規律の下にあるときにおいてのみ、その権力をぞんざいに乱用しるうことを差し控えてきたのである。(・・・)さらに政府というのは、もし金本位制度あるいはこれと同類の制度に縛られていなければ、信用できない十分な理由があるのに対して、民間企業というのはその存在が事業の目的の成否に依存するものであり、それが発行する貨幣の価値を安定に保ちうることをなんらの理由もないからである」(P26)
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5 法貨の神秘性
「貨幣のような道具は「発明」されねばならず、そしてある最初の発明者によってわれわれに与えられたものであるという信念である。このような深遠は、貨幣のような制度は計画されたものではなく、社会の進化の過程において自生的に生成したもの(spontaneous generation)であるというわれわれの理解によって菅z年に排除されてしまったのである(その他の主な同様な例としては法律、言語おび道徳がある)」(P29)
「法貨というのは、契約が履行される時に、契約したときには全く思いもよらなかったものを人びとに強制的に受け取らせるための法的なからくりにすぎないというのがまさに真相なのである。」(P32)
「征服、革命あるいは国家の解体の結果として政府がなくなったために、政府発行の通貨が他の通貨に代わられる場合には本当に困難なことになる。」(33P)
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6 グレシャムの法則についての混乱
「グレシャムの法則は、固定された交換比率が法律によって強制されている異なった種類の貨幣にのみ適用されるものである。(・・・)しかしながら、可変的な交換比率があれば質の劣る貨幣はより低い比率で評価されるであろう。(・・・)人びとはいろいろな機関によって発行される貨幣のなかで最良の貨幣と考えるものに向かって進んでいくであろう。そしてそれは、不便でありあるいは価値がないと分かった貨幣を、急速に排除してしまうであろう」(P37-38)
「グレシャムの法則は間違っていない。ただそれは異なった形態の貨幣の間に固定された交換比率(fixed rate of exchange)が強制されている場合にのみ当てはまるのである」(P38)
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7 並行通貨と貿易鋳貨についての乏しい経験
「固定されない交換比率を持つ二つの金属鋳貨の同時流通という制度は、このような制度が1857年まで存在していたハノーバーからの学者によって、後に金銀複本位制度と区別して、並行通貨(parallel currencies, Paralleluvahrung)と名づけられた」(P42)
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8 民間名目貨幣の発行
「人びとは今日、銀行というものはその事業を継続するためには、その事業を調整していつでも要求払預金を現金に交換できるようにするであろうということを信頼しているのである」(P49)
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9 異なる通貨を発行する銀行間の競争
「(a) 購買力がほとんど一定に保たれると一般に期待されている貨幣は、人々がそれを用いることが自由である限り、つねに持続して需要されるであろう 」(P55)
「(b) このような持続する需要は、通貨の価値を一定に維持することの成否に依存しているということから、人びとは貨幣の減価によってはなんら危険を受けない独占発行者よりも、各発券銀行の方が価値の安定の達成に全力を尽くすことを信頼しうるであろう」(P55)
「(c) 発券機関はその発行量を規制することによりこの価値の安定という結果を達成できるであろう」(P55)
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10 貨幣の定義についての補論
「異なる種類の貨幣というのは、完全に関係がないものではないが二つの明白な要素、すなわち、受領性(acceptability)ないしは流動性(liquidity)とその価値についての予想される動き、すなわち、安定性(stability)ないしは可変性(variability)の点でお互いに区別されうるということである」(P64-5)
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11 競争通貨の価値を統制する可能性
「同様な他の通貨発行者と競合している発券銀行は、その固有の銀行券の価値が市場においてそれが望むように決定されるように、銀行券の量を統制する地位からを持っているかという問題である」(P68)
「公衆が保有しようとする総額を超えて通過を増加すれば、必ず通貨支出の増加となり、その通貨で表示されている商品価格を押し上げるであろうということ、同様に銀行がその通貨の供給を、公衆が保有しようとする総額以下に減少すれば、必ず通貨支出を減少させ価格を引き下げるに違いないということである」(P69-70)
「多額の増加し続ける流通通貨の総量を維持するためには、通貨の借入需要ではなく通貨を保有しようとする公衆の意向がきわめて重要である」(P75)
「多額の増加し続ける流通通貨の総量を維持するためには、通貨の借入需要ではなく通貨を保有しようとする公衆の意向がきわめて重要である」(P73)
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12 公衆はどのような通貨を選ぶであろうか
「公衆は競争的ないくつかの民間通貨の中から、政府の供給するよりもよい貨幣をえらぶであろうというのが私の命題である(・・・)」(P80)
「利用可能な各種の貨幣の間の選択に主として影響を与えるであろう貨幣の用途に四つの種類がある。第一は財貨及びサービスの現金での購入のため(・・・)。第二は将来の必要に対する準備の保有(・・・)。第三は繰り延べ支払のための契約における用途(・・・)。そして最後は計算単位としての用途とくに帳簿急記入(・・・)」(P81)
「一見、日々の買い物における便利さということが選択において最も決定的なものであると思われるけれども、私はこのことは計算単位としての整合性が決定的な属性であることを示すものであると信じる」(P82)
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13 貨幣のどのような価値が妥当なのか
「価値は関係であり、等価比較の比率である。またそれは、ジェボンズが述べたように、「比率を表す間接的な方法」である」(P86)
「なぜ人々は商品を基準として安定した価値をもつ通貨を好む傾向にあるかという理由はつぎのようなものであろう。すなわち、反対方向への誤差をもつ効果はお互いに相殺される傾向にあるからこのような通貨は、価格の動きに避けられない不確実性をもつ効果を最小にする助けとなるということである」(P92)
「通貨発行の過剰または不足の結果が消費財価格の変化に現われるまで、通貨流通量の調整が延期されるならば、かなり顕著な生産財価格の変化が避けられないであろう」(P94)
「人々は少なくとも現在の国民のいる地域をはるかに越えた広い領域にわたって、彼らの通貨の価値を一定に維持しようと望む基準として卸売り商品価格の標準的組合せを用いることに同意する」(P95)
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14 われわれの目的にとっての貨幣数量説の有用性
「自由な通貨市場が存在する限り、人々は度の通過ででも(ある価格で)うる用意があるであろうが、人々はいつもある通貨を保有する必要はない。」(P)
「数量説は貨幣量の変化の一般物価水準への影響を強調することにより、インフレーションおよびデフレーションが債権者と債務者との関係におよぼす有害な影響のみにあまりにも注意を向けているが、それは貨幣量の流通への注入とそこからの引き上げが相対価格の構造におよぼすより重要かつ有害な影響、またその結果としての誤った資源配分、さらにとくにそのために生じる誤った投資傾向を看過しているということである」(P103)
「ひとびとが自らの変化した流動性選好に彼らの支出を増加あるいは減少させることがないように、貨幣量(というよりはもっとも流動的なすべての資産の総価値)が維持されるということである。貨幣量を一定に維持するということは貨幣の流れが一定にとどまるということを保証するものではない。また貨幣の流れの大きさが望ましい形で動くようにするためには、貨幣の供給はかなりの弾力性を持たねばならない」(P104)
「インフレーションは全価格に同時に影響するのではなく、それは主主の価格を継続的に上昇させ、そしてそのために価格間の関係を変動させるものである。(…)この[インフレーションの]効果は経済の昨日に体いて長期に渡って多くの損害を与え、そして最後には自由な市場組織が運行できないようにしてしまう。(…)失業の大きな波を生み出すのもこの効果である」(P106)
「(…)実質賃金が下落するはずである労働者集団が、彼らの実質賃金を一定に維持するように要求することを強めることになるであろう。しかしこのことは、他に比べて相対的に賃金を増加させることが、いずれも賃金が最低である労働者を除いてすべての労働者の名目賃金の増加となって現われねばならないことを意味するのである(…)。」(P)
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15 望ましい貨幣供給の動き
「各通貨にとって必要な額というのはつねに次のような額である。すなわち、一定であることになっている商品「バスケット」の総価格を(直接ないし間接に)増減させることのないように、各通貨が発行されあるいはその流通が保たれるのに適合した額である。このルールによってさまざまに変化する「取引の必要」(needs of trade)を満たすためのすべての本物の需要がまかなわれるであろう」(P120)
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16 自由銀行業
「一国の銀行券発行の集中化を主張したものたちが最終的にえた勝利は、安い信用を提供できる銀行に主として関心を持った人々に対して譲歩することで、事実上は弱められてしまったのである。この譲歩というのは、特権を与えられた発券銀行は、急速に重要性を増しつつあった要求払預金の支払いに必要な銀行券をすべて、商業銀行に供給しなければならないという義務を承認することにあった。この決定というよりはむしろ中央銀行がいつの間にか陥ってしまった慣行の承認によって、総貨幣量に関する責任が致命的な仕方で分割されてしまい、事実上は誰も層化へ医療を規制する立場にいないような非常に不幸な混合制度(hybrid system)が創り出されてしまったのである」(P124)
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17 全般的なインフレーションやデフレーションは再び生じないか
「「コスト・プッシュ」インフレーションなどというものは厳密な意味ではまったく存在しないと答えられなければならない。購入者が買い入れしたためにこれまでよりも多くの貨幣を与えない限り、賃金の上昇および石油価格ないしおそらく一般の輸入品価格の上昇によって、すべての財の総計価格が押し上げられるはずはない。いわゆるコスト・プッシュ・インフレーションは、賃金(または、その他の費用)の上昇によって生じる失業を防ぐために、政府が余儀なく供給しなければならないと思っている貨幣量の増加の結果にすぎないのである」(P132)
「貨幣量の増加によってもたらされる初めの[意図的に創り出されたインフレーションが必然的に加速化することの]一般的な刺激は、主として価格、そしてそれゆえに利潤が予想されたよりも高くなってしまうという事実によるのである」(P134)
「労働組合の独占的行動によって生じた失業に対してインフレーションで戦おうとする試みは、貨幣量の継続的増加によって雇用を維持するのに必要なインフレ率が耐えがたいものとなるときまで、雇用に対する影響を単に伸ばすだけであろうということである」(P137)
「ひとびとに投資の再開を促しそれによって切迫した諸価格の下落をとめうるようなものは何もないというような失望と無気力が全般的に支配する状態が、なんらの出来事によって生じるかもしれないということはもちろんまったく排除されうるものではない」(P140)
「過去における市場経済の不安定性は、市場機構のもっとも重要な規制者である貨幣それ自体が、市場過程によって規制されることから除外されていたことによる結果なのである」(P144)
「この[中央銀行機能]ような機関の必要性は、要求あり次第ある他の銀行が唯一発行権をもっている通貨単位で払わねばならない債務を負っている商業銀行にもっぱら帰せられるべきである。したがって、事実上はこの商業銀行は他の通貨によって兌換され売る貨幣を創造していることになるのである」(P150)
「貨幣の供給の弾力性とその価値の安定性とが調和されうる方法というのが真の問題である。そしてこの問題はある特定の通過の発行者が、その通貨単位の価値が(商品を基準として)安定にとどまるように通貨量を調整することに、みずからの業務が依存しているということを承知しているときにのみ解決されるであろう」(P151)
「利子率を政策的手段として用いるべきであるという考えのすべてがまったく誤りである。なぜならば、自由市場での競争のみがり私立の決定に際して考慮されるべき諸事情をすべて考慮しうるからである」(P152)
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19 固定為替相場制よりもよい規律
「私が固定相場制を必要であると考えてきたのは、(…)貨幣発行機関に対して、是非とも必要な規律または制限を課すことが不可欠であろうということによるものであった」(P155)
「金(あるいはその他の通貨)と兌換可能な通貨の価値は、金の価値から派生したものではなく、ただ通貨量の自動的な規制を通じて金と同じ価値に維持されているだけである。(…)しかし金本位制度のもとでさえ、通貨の価値はそれに含まれる金が他の用途に用いられた場合にもつ価値(もしくは金の生産費用)によって決定されるということは事実でない」(P155)
「国際金本位制度というのは、今日では少数の国が真の金本位制度を維持し、他の国は金為替本位制度(gold exchange standard)を通じてこれらの国々にしがみついているというだけの意味しかもち得ない」(P158)
「ひとびとが受け取りを強制されているという理由のみで流通している[現行の不換]紙幣は、発行者がその貨幣を安定に維持するとひとびとが信頼しているという理由から受け取られるようになった[自由競争に基づいた]紙幣とはまったく異なっている」(P160)
「貨幣はそれが稀少であることが知られているゆえに、そしてそうであるかぎりにおいて価値があり、さらにその理由によりおそらく通用価値で他の人々に受領されるのである。そして発行者によって稀少に維持されると信頼されているからこそ自発的に使用され、また発行者がその信頼が正当であることを示すかぎりにおいてのみ人々に保有されるような貨幣はすべて、既定の価値での受領性をますます確実なものとするであろう」(P161)
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20 別々の通貨圏があるべきか
「この[貨幣国民主義(monetary nationalism)]制度は問題となる生産物に対する外国からの需要が減少し、他国の領域に移行した時に、特定の部門の価格、徳に賃金を下げる必要を回避できるために好都合であると考えられている。しかし(…)それは事実上は直接影響を受けた少数の価格引き下げのかわりに、地域通貨の国際価格が下落した後に国際均衡を回復するためには、非常に多くの価格が上昇しなければならないことを意味している」(P165-6)
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21 政府の財源調整と支出に対する影響
「これまでつねに有害であったのは貨幣に対する権力である。これを財政上の目的に使うことはつねに権力の濫用である。そして経済活動の円滑な流れを確実にするのに必要な仕方でこの権力を行使することに、政府は関心も能力も持たなかったのである」(P176
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23 国家からの保護
「貨幣発行の政府独占の廃止が、政府支出の過剰な増大の障壁となることについで、それが個人の自由の擁護を保証するという二番目の基本的な貢献をはたすことになるのは、おそらく国際取引の錯綜した絡み合いによるものであろう。これによって政府にとって国際移動を規制することがますます不可能になり、したがって、政府とまったく意見を異にする人々が政府の抑圧から逃れうる機会が保障されるのである」(P186)
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24 長期的な展望
「制度がひとたび完全に確立され、競争がいくつかの失敗した企業を排除してしまえば、自由世界にはいたるところで使用されている非常によく似た数種類の通貨が残るであろう。(…)そしてそれらにおいて優位を占めている通貨は、広範囲の変動する境界領域において重複して試用されるであろう。類似した商品集合体を基礎としているこれらのほとんどの通貨は、短期においてはたがいを基準としてはごくわずかにしか価値が変動しないであろう。(…)これらのほとんどの通貨は、このように単にお互いにならんで流通しているという意味だけではなく、それぞれの価値の動きがお互いに一致しているという意味でも競合している(concur)のである」(P187-8)
「一つの通貨が完全に崩壊したとしても、それは今日類似の出来事に見られるような範囲に及ぶ破滅的な結果をもたらさないであろう。ある特定の通貨の銀行券あるいは要求払預金のかたちで貨幣を保有している者は、それらのすべての価値を失うかもしれない。けれども、これはこの通貨で表された第三者へのすべての請求権の全般的な減少に比べれば、比較的小さい攪乱であろう。」(P)
「すべての大きなインフレーションの最終的な結果がこれまでそうであったように、債務の共通の基準がどれも完全に消失してしまうとか、あるいはすべての金銭債務が消滅するというようなことはけっして起こりえないことである。こうしたことが起こるずっと以前に、だれでもみな減価した単位を放棄してしまうであろう。そして旧債務がこの単位で返済されるということはありえないであろう」(P192)
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25 結論
「貨幣の管理が政府の手中にある限りにおいて、金本位制度はその多くの欠点にもかかわらず、やはり唯一のかなりの安全な制度である。(…)しかしわれわれは政府を介さなくても、金本位制度よりうまくやっていくことがたしかにできると信じている」(P)
「組織された利害関係者の圧力によって支配されている世界では、心に留めておくべき重要な事実は、われわれが必要とする機関をうるために当てにできるのは、知力や理解力ではなく、純然たる利己心のみであるということである」(P196)
訳者あとがき
「第1の問題点[政府による通貨供給の独占禁止の必要性]についてハイエクが強調していることは、政府の貨幣独占が現代の資本主義社会における重要な欠陥の主要な原因になっているという点にある。こららの欠陥としてハイエクが取り上げるのは、趨勢的なインフレーションの存在、循環的な不況と失業の発生、歯止めのない政府支出の増大、経済国民主義による資源の臭い移動の制限の四つである。」(P209)
「第2の問題点である民間機関の競争によって(…)安定貨幣、すなわち、価格の安定した貨幣が民間機関の利己心によって共有されうるというのがハイエクの解答である。(…)各機関によってそれぞれに固有の名称と価値を持った貨幣が紙幣ないし当座勘定の形で共有される。各紙幣はその時々の交換比率による相互の交換可能性が法的に義務付けられるとともに、各機関はそれぞれの貨幣価値が一定に維持されるように供給を規制することおよび価値の基準となる商品等価物の構成内容を公示する」(P210)
「ハイエクはもはや金融政策は必要ではなく、国際収支問題も存在せず、さらに中央銀行もまた消滅すべきことを強調する(…)」(P211)
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