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加賀谷哲之 伊藤邦雄 2002 「企業価値経営論(3)」
『一橋ビジネスレビュー』2002 SUM.Pp.132-51.



1 企業価値の決定因子としての無形資産
2 無形資産の潮流
3 無形資産経営を支える企業評価モデル
4 CBバリュエーターによる経営改革



 「経済のネット化が進展するなかで、情報を軸とした統合により、様々な経営資源の組合せが容易となり、必ずしもすべての機能・資産を組織内に維持せずとも、効率的なバリューチェーンの統合が実現できるようになった。その結果、従来型の有形資産の大規模は、むしろバランスシートの肥大化を招き、かえって資本コストを増大させるという結果を招きつつあるのだ」(p133)

「無形資産とは、物的な実体を伴わない将来便益の請求権と定義できる。あるいは、貨幣資産や有形固定資産などといった物的な実体が存在する資産以外で将来の経済的便益の源泉となり得る無形の要素を指す。」(p134)

 「IBMで積極的に進められたのが、無形資産に関連した仕組みの見直しであった。とりわけ重視されたのが、知的資産の源泉である研究開発部門の変革と「e-business」をキーコンセプトとしたブランディングの推進である」(p135)

 「同社(ダウ・ケミカル)では、各事業部門に知的財産権に関する管理を徹底するよう求め、ビジネスに利用可能な知的財産権については利用ないしはライセンスかを積極的に進めるとともに、不要な特許の放棄ないしは非営利団体への寄贈を行うことにした。これによりそれらの特許維持のために必要とされていた4000万ドル超のコスト節約が実現された」(p138−9)

 「無形資産が「同時・多重利用が可能」である点である。(…)顧客情報や技術、ソフトウェア、ブランド、ビジネスモデルなど多くの無形資産は、多重利用・複製が可能である。そのためしばしば無形資産への投資を行っていない競合他社によるフリーライディング(ただ乗り)やイノベーションのスピルオーバーを生む。(…)ビジネスモデルが特許として認められるようになった背景も、法的に保護しなければ開発した企業の優位性が保てないからである。つまり無形資産への投資から得られる便益を、企業が独占的にコントロールする事は容易ではないのである」(p142)

 無形資産へ投資したからといっても、必ずしも将来に経済的便益が得られることが保有されないのである」(p142)

 「多くの無形資産の取引市場は存在しない。そもそも無形資産への投資は不確実性が高く、どのような成果を生み出せるかを予測することは困難な場合が多い」(p142)

 「いくら理念として優れた経営モデルを提唱したとしても、その進捗度を定量化できなければ、あるいは価値測定できなければ、それを推進することは難しい。それは体重測定せずにダイエットを進めているようなものである。どのような行動が効果に結びつくのか明らかにならないまま意味のない行動を繰り返したり、あるいは思わぬところでむしろマイナスとなる行動を行っている可能性もある」(p145)

 



041017作成
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